アサヒ死す!?

「がぁっ!」

「アサヒ!」


数分後。彼らは男たちにブリッジらしき部屋へと連行されていた。

床に投げ出され、顔面を強打するアサヒ。

部屋には、銃で武装した男たちが複数人いた。


「ったく、どっから忍び込んだんだぁ?」

「おい誰だよ!転送装置のスイッチ入れっぱなしにしてたの!これのせいだろ!」

「悪い悪い、それ俺だわ」

「悪いで済むかよ!」

「まぁまぁ、捕まえられたんだしよかったじゃねぇか」


がやがやと騒ぐ男たち。そんな様子に、


「何なんだよお前ら!いったい何が目的で!」

憤りが爆発し、立ち上がって怒鳴り散らすアサヒ。しかし、


「騒ぐなガキ!」

「ぐぁっ!」

ガッ!

銃の後部で強く殴りつけられ、再び床に叩きつけられる。


「おい、あんまり乱暴にすんな。商品になるかもしんねぇんだからよ」

それを見ていた男の一人が、殴りつけた男を諫める。


「商……品……っ?」

「そ、お前たちは売られんの。奴隷ってやつ?」

奴隷。その単語を聞いた瞬間、アサヒとカグヤの背筋にひやりとしたものが駆け抜ける。

「甘い言葉につられて、ホイホイついてきて……ホントバカな連中だよ」

「どこへ行っても、現実から逃げられやしねぇってのに」


「「「ハハハハハハハ!!」」」


男たちは、下品にゲラゲラと笑いたてる。


「ふ、ざ、けんなあぁぁぁっ!」

直後。アサヒの怒りが爆発した。


「ぶっ!?」

「うあっ!」

素早く立ち上がると体をねじり、背後の男の顔面に左で裏拳を浴びせる。そのままの勢いで右の回し蹴りを隣の男の側頭部に食らわせ、大きく後退させる。


「んのヤロ!」

こうされては黙ってはいられない、と正面の男が殴り掛かる。が、

「オオ、ラッ!」

「うっ!?」

腕を交差させてそれを受け止め、右手で相手の右腕をねじり上げる。

そしてすぐさま腰を入れた左でのパンチを相手の腹部に叩きこむ。

男がよろよろと後ろに下がると、アサヒは肩で息をしながら構えを取る。


「お、おい……もう撃っちまおうぜ」

「けどよ……」


銃を使うか否か。男たちが揉めていた――そんな時だった。


パァン!


乾いた音が、部屋に響いた。


「あぁっ!」

瞬間、アサヒの右脚に激痛が走る。

おびただしい量の血液が流れだし、床へ倒れこみもだえる彼。


「まったく、何をやっているんだお前らは」


コツコツと足音が響く。

呆れた様子でそう言いながら歩いてきたのは、黒いスーツに身を包んだ、小太りの男だった。その手に持った拳銃の銃口からは、まだ煙が噴き出していた。


「隊長!」


隊長――そう呼ばれた男は、アサヒとカグヤを交互に見ると、横にいる男へ言った。

「おい」

「ハッ!」

「何故、男がいるんだ?」

「ハッ?」

意味が分からない、といった具合に聞き返す部下。


「何故男がいるんだ、と言っているんだ!」

「も、申し訳ございません!ですが、何か問題でも?」

「男の奴隷は必要ない!今すぐ廃棄しろ!」


その言葉に、部下がざわつき始める。皆、「何を言っているんだ」という様子だ。


「た、隊長!本部からそんな命令は受けていないはずでは……?」

「私の命令に……逆らうつもりか?」

「い、いえ!」


男に凄まれ、部下たちは渋々アサヒの肩を両側から担ぎ上げ、運んでいく。


「アサヒを離しなさいよっ、この宇宙人!」

「おおっと、君は別だ」

たまらず飛び出すカグヤだったが、男に阻まれてしまう。


「アサヒっ!アサヒいぃぃぃーーっ!」

室内に響き渡るカグヤの絶叫。しかし無情にも、アサヒの姿は閉まりゆくドアの向こうへと消えてしまった――



――船内 廃棄処理室前通路


「お前も災難だったなぁ。隊長の気まぐれで殺されちまうんだから」

「ぐぅ……」

朦朧とする意識の中、目線だけで男をにらみつけるアサヒ。


「よし、ここだ」

しばらくして、男たちの動きが止まる。そこには、厳重に閉じられた高鉄の扉があった。


「この先はブラックホールに繋がっている……宇宙の墓場さ」

「今からお前をここに放り込んで、おさらばさ」

言いながら、男はパネルを操作し、扉を人が入る程度まで開く。

真っ黒な暗黒の空間――そうとしか形容できない光景が、そこに広がっていた。


「おい早くしろ、俺たちまで巻き込まれちまう」

「そうだな」

男たちはアサヒをぐい、と前にやると、


「じゃあな」

そう言って、彼を暗闇へと突き飛ばした――

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