第四話 全裸捜査開始


 警察長官たちが退室をして少し置いて、二人は捜査の為に。街へと出る。

「ストリーキングだね」

 部屋の姿見を見ながら、マコトはあらためて、全裸にアクセサリーやブーツとのみいう姿に、美顔を染める。

「さ、マコト、行きましょう」

 対してユキは、少なくともマコトよりは、現在の恰好に慣れたらしい。

 部屋を出て、豪華で広い廊下で、数名の女性客やホテルマンの男性たちと、すれ違う。

(う…)

 裸のまま普通に歩いている女性客はともかく、正しく着衣をしている男性の従業員とすれ違うと、やはり焦って、耳と尻尾がビクんと反応。

 もちろん、従業員は一流の接客を心得ているし、そもそもが選びに選び抜かれたホテルマンの見本のような男性ばかりなので、二人や女性客たちをジロジロ見る失礼な態度など、微塵も無し。

「コンシェルジュさんが言っていた通りだね。逆に感心してしまうと言うか…あの凄いプロ意識は、ボクも見習いたいくらいだよ」

「ふふ…でも意外と皆さん、マコトの魅力に抗っていらっしゃるかも しれませんわ」

「ないよ。ユキの魅力に耐えている可能性なら あるだろうけど」

 からかうのが楽しいお姫様のような笑顔で、ユキは愛らしく微笑みながら、マコトの隣をピョンと付いてきた。

 フロントへ出るのも裸では決心が必要だったけれど。更に街に出るのは、流石のユキも一呼吸を置いたりする。

「ふぅ…それでは、参りましょう」

「う、うん」

 全裸にブーツで、ホテルから街へと繰り出す、美しきケモ耳美少女捜査官たち。

 晴天の街に一歩踏み出すと、太陽の暖かさや風の気持ち良さが、全ての肌へと直接に感じられて、裸でいる事が更に意識をさせられてしまった。

「ぅ…ユキ」

 女性客たちはみな、全裸にヒールなどのスタイルで、リゾートの街を楽しそうに散策している。

 ビークルをレンタルしている女性たちもいて、半重力エレカは完全なオープントップ。

「みんな 凄いね」

 二人とも、ケモ耳やケモ尻尾をピンと姿勢良く立たせているけれど、恥ずかしさで小さく震えてもいる。

「ええ。さ、私たちも」

 ユキに手を引かれる形で、マコトは街中へと踏み出した。

 リゾートアイランドと言っても、景観は普通の観光惑星と大きな変化はない。

 広い車道や綺麗な歩道と、整備された並木や様々なショップや施設やストリート。

 中心地区から離れると人通りは少なくなるものの、広大な景色や造成されたリゾート施設に、野外であるという環境が、あらためて強く認識させられていた。

 マコトもうっかりすると、ピンと立てた尻尾が恥ずかしさで、お尻を隠す為に丸まってしまいそうになる。

「………」

 そんな街中を、全裸で歩いているという恥ずかしさはなかなか慣れないものの、他の女性たちは全く気にせず歩いているし、男性のコンシェルジュたちは下心のある視線など持ち合わせていらおらぬと言わんばかりの、徹底ぶりだ。

「何ていうのかな…仕事ではなく、更に水着OKなら、最高のリゾートアイランドなのにね」

 もちろん、このビンプルンにはそういうドレスコードのアイランドもある。

 しかしユキ曰く。

「あら、この解放感こそが、このアイランドの醍醐味でしょうに♪」

 本気で言っているのは、弾んだ声でよく解る。

「ユキのそういうところ、すごく女の子っぽいって感じるよ」

「そうですか? あら、ティールームがありますわ」

 歩道の一角に、小さくて可愛らしい上品な、白いドリンクショップがあった。

 鮮やかな緑の芝にテーブル席を借りるとすぐ、着衣男性のコンシェルジュが、オーダーを伺いに歩いて来る。

「いかがいたしましよう?」

 ドリンクを注文する客だと解りきっているから、オーダーも最小限度の言葉で済ませられるらしい。

「ピンクビンプルンを二つ。アイスでお願いします」

 テーブルで立体表示されたメニューから選んで注文をすると、男性は丁寧な会釈を捧げて、ドリンクショップへと戻ってゆく。

「それで、どう?」

「ええ。マコトが言っていた通り、衛星軌道からのショットですわ」

 白鳥がステーションの外のベイに接岸されている事を利用して、ユキの操作で白鳥のカメラを使用しての、地上の衛星写真を撮影していたユキ。

 ホワイト・フロール号のセンサー類は、標準的な高速航宙船の企画だけど、ユキが違法ギリギリ改造をしまくっているおかげで、地球連邦軍の駆逐艦なみに性能が底上げされているのだ。

 ペンギン・アイランドの全景が画像として撮影されていて、南西側の海岸線を、センサー操作をしながら拡大。

 直上ではなく斜め上からのアングルで撮影さできたのは、ステーションの位置のおかげだけど、ラッキーだった。

「西の海岸線から森林あたりまで、海洋有機物の検査結果、どう?」

「マコトの推察通り でしたわ」

 犯罪グループは、ペンギン・アイランドの西の海に墜落をして、脱出をしてそのままこのアイランドに上陸をしたのなら、濡れた服も脱がずに上がってきた可能性が高い。

 なので、衣服に海水をタップリと吸わせたまま上陸しただろうから、身を隠しながらも水滴による海水の痕跡が、まだ残っているのでは。

 と考えたマコトは、ダメ元でも、ユキに撮影と物質走査をして貰ったのだ。

「海岸線から山麓の林まで、幅五メートル程で 海水成分が検出されてますわ。林の中に入られてしまったあたりでは、もう植物に遮られてしまって、衛星軌道上からでは地面が見えませんから、これ以上は無理ですわ」

「でも、バラリー団が山の中に隠れているっていう線は、当たりだろうね」

「周囲の平地から考えても、そのようですわね」

 言いながら、遠くの山を見上げていたら、オーダーしたアイス・ピンクビンプルンが届けられる。

「ごゆるりと」

「…はい」

 男性の声で焦ったマコトは、つい耳と尻尾がピンと立って、身を縮ませそうになる。

 男性コンシェルジュがショップへ戻ると、ホっと安心してしまった。

「驚いたよ」

「くすくす、マコトったら。バランスの取れた、素敵なプロポーションなのですから。もっと堂々とされている方が、美しいですのに」

「ユキ以外の…特に男性には、抵抗あるもん」

 中性的で美しいのに子供みたいなマコトを、ユキは優しいお姫様のような笑顔で見つめていた。


 女性たちも男性たちも、当たり前だけどリゾート地には、様々な惑星の人種がいる。

 マコトやユキのケモ耳も、地球本星では多少は目立つものの。この惑星では完全に没個性と言えるだろう。

 地球領の惑星とはいえ、領域の端に存在しているからかもしれない。

 純粋な地球人タイプの人種は、ほぼいなかった。

 マコトとユキも、凝った変装などで正体を隠すよりも、観光客として普通に散策しているふりをしてアイランドの捜査をした方が、目立たない。

 半重力サイクルをレンタルして、街中を走って、観光気分も高めてゆく。

 二人で並んで走っても、開けているうえタップリと広いコースの幅は、誰かとぶつかる心配もないのだ。

 全裸で乗る半重力サイクルは、大昔の地球で製造されていた、サイクリング・ジテンシャに近い形をしている。

 跨る際にも、二人は脚を大きく開かなければならないし、推進自体はオートとはいえペダルを踏む感覚を楽しむビークルなので、裸のお尻は常に左右へとくねられる。

 更に、漕ぐ動作に従って、下向きで質量を増した二人の巨乳が、左右へと揺れ続けてもいた。

「それにしてもさ。警察長官、ボクたちの素性を知っていたよね?」

「ええ」

「つまり、ボクたち捜査官のアクセサリー類の備品も、知ってて見逃してくれた。という事だよね」

「そうでしょうね。とはいえ流石に、リミッター解除までは 見抜けなかったでしょうけれど♪」

 違法ギリギリ改造とか、こういう時のユキはとても楽しそうだ。

 ユキが身に着けているアクセサリーの中に、一つだけ、警察長官から渡された物がある。

「その発信機も、なかなか綺麗にアクセサリー してるよね」

 預けられた発信機は、人口宝石で形作られたネックレスで、中央がスイッチになっていた。

 長官曰く、惑星の中継衛星とは常に回線が繋がれていて、スイッチを一回押すと位置情報を発信し続ける追跡機能がオンになり、二回押すと緊急信号が発信されるという。

「つまり、犯人グループと対峙をして、こちらが危機的状況に陥った場合、あるいは犯罪グループを確保した場合、緊急信号を発信する。という手筈ですわ」

「…んん?」

 この辺りのメカ的なヤリトリは、マコトにはよく解らない。

「この発信機は常に衛星とリンクしていて、しかし使用権利は私たちに委ねられている。そして犯人グループを逮捕したら緊急信号。という作戦ですわ」

 惑星警察を疑うわけではないけれど、念のための内部チェックは、メカ好きなユキが済ませている。

「まあ、警察長官の意思に嘘が無いっていう事は、ボクも理解しているよ」

 マコトは立体地図を見ながら、捜索範囲へと散策目的を移行した。


「開発中で閉鎖されているホテルは、三棟。それぞれに距離があるけれど、歩いて調べられない距離ではないかな」

「ドローンが使用できれば、便利でしたけれど」

 閉鎖されている進入禁止区域にドローンが飛んでくれば、流石に犯人グループも、警戒してしまうだろう。

「ボクたちがここに来る可能性だって、犯人たちは考えている。くらいの用心は しないとね」

 データ上では未入星であっても、この惑星まで追ってきた事は知っているワケだから、安心してはいないだろう。

 ユキが前を走って、山の麓のサイクリングコースまでやってくる。

 後ろを走るマコトの視界には、ユキの白くて大きな裸ヒップが、左右へと扇情的に揺れている。

(……ユキの尻尾、小さくて可愛い…)

 コースの入り口まで来ると、サイクリングを楽しむ全裸の女性客たちが、数名いた。

「ではマコト、私たちも 林のサイクリングコースを楽しみましょう」

「うん。ボクが先を走るから。ユキは無理しないで付いてきて」

「解りましたわ」

 マコトが先頭について、二人は木々の茂るサイクリングコースへと侵入。

 コースとはいえ林の中に入ったり二人切りになった事で、マコトの尻尾やユキの耳も、街中とは違って多少のリラックスが出来て、立ったままユユラユと風に揺れたり。

 前を走るマコトの裸身に、木陰が光と影を落として、柔らかく滑らかな肌曲線を、官能的に彩っていた。

(マコトの背中…綺麗に引き締まって 素敵ですわ)

 サイクリングコースは三棟のホテルの周りを巡っていて、途中には、休憩施設や湖なども造成されている。

「湖、ちょっと寄ってみようか」

「ええ、素敵ですわ」

 二人はさり気なく、ホテルの方向から樹木でジテンシャを隠して、止める。

「それじゃあ。準備いいよね」

「ええ」

 ユキの、リミッター解除して索敵範囲を拡大させた手首のリングをオンにすると、金属や電波の索敵が始まる。

「範囲は狭いですから」

「林に隠れながら、歩くしかないね」

 マコトとユキは、全裸にブーツの半裸姿というで、林の中へと侵入して行った。


                     ~第四話 終わり~

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