第二話 脱ぎ捨てて上陸
入星ステーションから惑星本土へと上陸する為には、中央大陸と往復をしているシャトル便を使用する。
二人は上陸審査ゲートへと向かい、まずは荷物の検査だ。
「お持ち込いただけるお荷物は、メイクアップキットやアクセサリー類、ブーツなどのお履き物に限定されます」
「ええ」
ユキが堂々とメイクボックスを手渡すと、本人のゲート通過と共に、専用ゲートを荷物も通過。
エックス線などのチェックを受けると、男性の係官から、メイクボックスが返却された。
「ありがとうございます。問題はありませんでした」
「ありがとう」
優雅なお姫様の労いそのままなユキの微笑みに、男性職員は恥ずかし気な戸惑いを隠せない様子だ。
それぞれのアイランドと違って、ステーションに努める係員たちは、極めて普通な反応を見せていた。
これがアイランドでは、どのように違うというのか。
(男性職員さんとか、ユキにクギヅケになるのかな?)
少し不満げなマコトである。
中央大陸との往復シャトルへと、他のリゾート客たちに混じって乗船。
惑星本土へ降りると、殆どの客はそのまま、目的のアイランドへ直行する往復ジェットへと、乗り換える。
それぞれのゲートを通過すると、マコトとユキは、ペンギン・アイランドに向かう往復ジェットのホームへと、案内をされた。
「ペンギン・アイランド行きのシャトルは、こちら Z‐〇三ホームで御座います」
大きな入り口を潜ると、すぐに扉がある。
「こちらの脱衣室にて、上陸の準備をお願いいたします」
「はい」
脱衣室の扉が開かれると、中は広い脱衣所そのままな造りで、三十人以上の女性客が脱衣できる場所だった。
壁は開放感のある景色の立体映像で、視線の高さより少し低い位置に、セキュリティー・ロッカーが設置されている。
衣服を脱いで、それぞれにメモリーされているナンバーのロッカーを呼び出して、衣服を預けておくシステムらしい。
「まさか、ヌードでジェット機に乗るなんて 思いも寄らなかったよ」
ペンギン・アイランドの規則により、上陸時からドレスコードはヌードである。
憂鬱げに言いながら、マコトは躊躇いつつ、衣服を脱ぎ始めた。
対してユキは、普段の生活と同じレベルで、まるでこれからシャワーを浴びるかのように、衣服を脱ぎ落してゆく。
「致し方ありませんわ。犯人グループを捕らえる為ですもの」
ワンピースを脱ぐと、恵まれたボディーラインは純白のランジェリーだけに包まれる姿となった。
「それにしても、ユキの度胸には 今更だけど驚かされたよ。よくあんな、アッサリと上陸を決められたね。ボクは 戸惑っちゃったよ」
マコトも上下のボーイッシュな衣服を脱ぐと、起伏の際立つシルエットが、水色のランジェリー姿になる。
「遅かれ早かれ、ですもの。それに、私たちが戸惑っている間にも、バラリー団にとって 逃走の時間稼ぎになってしまいますでしょう?」
「まあ、そうなんだけど」
ブラを外すと、マコトの大きな双乳が、ユキの丸い巨乳が、タプんっと、解放されて柔らかく揺れた。
ムチムチのお尻からショーツを外すと、タップリの安産型に発達したツルツルの巨尻が剥き出しに。
全裸になった二人は、それぞれのメイクボックスに収められているチョーカーやイヤリング、リストリングや指輪などを身に着けて、ナチュラルメイクも乗せる。
彩られて整った艶々ヌードに、ブーツだけを履いて。
「さて、行く?」
「ええ」
二人は全裸にブーツという姿で、背筋を綺麗に伸ばし、脱衣室から往復ジェットへと向かった。
不透明なチューブで繋がれた往復便の入り口に辿り着くと、なんと男性の係員が着衣で、二人と電子チケットを確認する。
チケットと交互に、全裸のマコトとユキの、全身をチェックされる。
男性の係員が目視しているというよりも、係員のネクタイに供えられている小型のカメラセンサーが、チェックをしているのだ。
「お待ちしておりました。ご搭乗下さい」
「どうも」
「どうも…」
ニコやかに労うユキと、恥ずかしさを堪えるマコト。
白いウサ耳は優雅に揺れていて、黒いネコ耳は羞恥心を隠しつつピクんと跳ねる。
往復ジェットは特注品らしく、三角形の船体サイズや白い外観からは、平均的な機能だと推測できるけれど、デザインはオリジナル性が強かった。
往復便の中は、豪華な造りだ。
通路はフカフカな絨毯が敷き詰められていて、シートは大きくて深くて柔らかな高級毛皮。
色艶も上級で品性が感じられて、気温もヌードの女性にとっての適温に設定されていた。
「まさしくセレブご用達、という感じだね」
「たまには、このようなお船も宜しくてよ」
往復便の席には、数名の全裸女性たちがくつろいでいて、みなセレブそのもの、みたいな派手オーラを隠さずにいる。
裸でシャトルに乗るのも恥ずかしいマコトたちとは違い、セレブたちはみな、ヌードでシャトルに乗るのも、男性の係官に直視されるのも、慣れている様子だ。
二人はチケットの席に並んで座ると、小声で話す。
「入星チェック、怪しまれている感じは無かったね」
「ええ。それに…」
もっと褒めて欲しい事がある時の、甘える美顔のユキだ。
「ユキが改造したリングとかブーツも、バレなかったね」
入星する前の一日、ユキは白鳥の船内で、アクセサリー類を改造していた。
アクセサリーそのものは、捜査官に支給される備品で、外見は一般販売しているアクセサリーと同じ。
しかし内部には小型のメカが収められていて、目くらましだったり電撃で気絶させたりと、自衛的な性格のアイテムである。
ユキはそのアイテム群を二人分、リミッター解除や機能増設など、ここぞとばかり好き勝手に改造していた。
「違法ギリギリの改造とか、ユキ 好きだものね」
美しい王子様が愛しい姫君を愛しく呆れるように、白い肩を揺らすマコト。
「潜入捜査なのですから、このくらいは所持をして、当然ですわ♪」
と、得意げなしたり顔も、イタズラなお姫様みたいで愛らしいユキだ。
「とにかく、今のところ 無事にアイランドへは、下りられるわけだね」
でなければ、ゲートを通過させて貰えなかっただろう。
アイランドに下りてからはともかく。
ジェット機が発進をすると、ほんの数分で目的の孤島「ペンギン・アイランド」の空港へと到着。
『長らくのご乗機、お疲れ様でした。当機はZ‐〇三 通称ペンギン・アイランドへと到着をいたしました。それでは、ごゆっくりと お寛ぎください』
機内放送と同時に、ジェットの扉が開かれる。
セレブたちが裸のまま次々と降りてゆくと、出入り口では男性の客室乗務員が、恭しく頭を垂れていた。
「それでは、私たちも」
「…うん」
二人はメイクボックスを手に席を立ち、入り口の男性からの会釈を受けながら、往復便から下りる。
「わぁ…」
「素敵ですわ」
ジェットの扉からは、空港ビルまで絨毯が敷かれていた。
周囲は、往復便が使用する滑走路と管制塔だけで、それ以外は、青空と高い木々と高い山々だけ。
空港の本部ビルどころかジェットの整備棟すら見えないのは、各施設が地下に建設されているという、景観第一の造成だからだ。
空はよく晴れていて、二人の裸身が青空と陽光に晒されていた。
「ホテルまで 山の向こうなんだね。徹底してる」
「この解放感こそが、ヌードの気分を高めてくれるのですわ。きっと」
「ヌードの気分ね…ボクは 知らなくてもいいかな」
入島ゲートを通過する際にも、二人が怪しまれている様子はない。
(ちょっと 拍子抜けかな…?)
(とはいえ、油断は禁物ですわ)
全裸にブーツのまま正式に入島をすると、チケットにメモリーされているホテルの大型リムジンが、それぞれの客ごとに、迎えに来ていた。
「お待ちしておりました」
客の名前を確認するまでもなく、背広をピシっと着こなす背の高い男性コンシェルジュに、手荷物を受け取られる。
整えられた面立ちはともかく、男性に裸を見られるのは、やはり恥ずかしい。
(チェック なんだろうけど)
とはいえ、あからさまに隠したりするのも、それはそれで恥ずかしい。
さり気なく隠すもの、コンシェルジュのプロ意識を信用していないみたいで、やはり気が引けるマコト。
「ご苦労様です」
なのにユキは、極めてナチュラルに挨拶をして、愛らしい微笑みで感謝と労いの気持ちを表して見せていた。
男性が後部座席の扉を静かに開けて、一歩下がる。
その所作には、下心など微塵も感じられない。
(ボクの方が 気にしすぎなのかな)
とか、少し考え込んでしまうマコトの憂いフェイスは、中性的な美しさで輝いてもいた。
二人が広い後部座席へとお尻を降ろすと、コンシェルジュが静かに扉を閉じる。
「それでは ホテルへ向かいます」
反重力リムジンが音も揺れも無く発信をすると、運転席のコンシェルジュから、メッセージを送られた。
「ホテルに到着されました後、当惑星の警察庁長官が、面会を望んでおります。ホワイト・フロール様」
「「!」」
全裸の二人は、後部座席で美しい表情を崩す事なく、しかし緊張をした。
~第二話 終わり~
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