第23話 一夜明けて
「ふぁぁぁぁ……」
大きなあくびをしながら洞窟内を歩く。
今はリュトさんとパパゴブリンも一緒です。
松明を持ったパパゴブリンが出口まで先導してくれています。
ただ、なぜか今日はずっと黙ったままですが。
「何かあったんでしょうか?」
「さぁ……」
リュトさんに小声で聞いてみますが、何も知らないみたいです。
「……見エタゾ」
パパゴブリンが今日初めて口を開きました。
見ると、洞窟の出口が見えてきました。
「ありがとうございます。
泊めて頂いただけでなく、
ここまでの案内までしてくれて」
「………フン」
そっけない返事をされる。
わたし何か変なこと言いました?
「じゃあここでお別れ。
ありがとさん」
リュトさんのお礼を合図にしたかのように、
パパゴブリンは出口と反対方向に歩き出す。
「……二度ト来ルナ、化物メ……」
すれ違いざまに放たれた言葉にハッとなる。
振り返るも、そのまま洞窟の奥へ消えていきました。
「……リュトさん、本当に何もなかったんですよね?」
「ん?何のこと?」
――絶対何かあった。
二人の様子を見て、なんとなくそれが分かった。
でも、
「……いいえ、何でもないです。
忘れてください」
リュトさんのことだ。
これ以上問いただしてもきっと何も教えてくれない。
わたしはこれ以上の追及は諦めることにしました。
洞窟を抜けると、
来たときと同じような
木々が生い茂った光景が広がっていた。
この森を抜ければ、
きっと次の街も見えてくるはずです。
ガサガサガサッ!
そばの茂みが揺れた。
「さっそく魔物ですか…」
言うや否や、蜂型の魔物が3匹飛び出してきた。
「キラービーだね
じゃ、頼んだよ」
「たまには一緒に戦ってください」
離れようとするリュトさんの袖を引っ張って引き戻す。
「……はぁ、面倒くさいなあ」
観念したのか、リュトさんも渋々剣をとる。
キラービーは、3匹同時に襲いかかってきた。
「【
手にした杖からかまいたちを飛ばす風魔法。
それを1匹のキラービーを狙って放つ。
ヒュン!
ギリギリで躱されるが、余波で動きが一瞬乱れる。
「【
そこにすかさず雷魔法を放つ。
電撃の直撃を受け、キラービーは地面に落下する。
この冒険で初めて魔物を倒した。
あと2匹、と――
「あ、そっち終わった?」
振り向くと、すでにリュトさんが
残りの2匹を倒した後でした。
「……速すぎないですか?」
「そう?」
わたしは1匹倒すのに手こずっていたのに…
改めて実力差を目の当たりにして、思わずため息をつく。
「…そういえば、風と雷魔法も使えたんだ」
ふとリュトさんが聞いてきた。
「え?あ、はい。
初級魔法しか使いこなせてませんけど。
でもこれくらいなら誰でも出来ますよね?」
憧れのミレイユさんは5属性の魔法、
それも最上位魔法を使いこなしていたそう。
わたしも村で魔術の本から色々学んで、
4属性の魔法が使えるようになったんです。
「そんなことより、先に進みましょうリュトさん」
会話を終わらせて、森の出口に続く道を歩き出します。
「……原理が違う複数の魔法使えるだけでも
すごいことのはずなんだけど……」
リュトさんが何か呟いた気がしましたが、
わたしには聞こえていませんでした。
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