第21話 ゴブリンの集落
子供ゴブリンに案内されて、洞窟の奥へ進んでいく。
しばらくすると、
「あっ、アレって灯り?」
遠くで炎の灯りらしきものが見えます。
「アソコデ、ミンナ、住ンデル」
そう言うと、ゴブリンは駆け出した。
私たちも追いかけると、
そこにあったのはゴブリンの集落でした。
岩壁には松明が燃え、
枯れ葉で組まれたテントが点々としており、
ゴブリン達があちこちにたむろしている。
「オ前タチ、誰ダ?」
そのゴブリンの中の一人が近づいてきます。
するとさっきの子供ゴブリンが、
「パパ!コノ人タチ、手当テシテクレタ…」
足に巻かれた包帯を見せながら主張しています。
どうやらこのゴブリンの父親だったみたいです。
「…ソウカ、礼ヲ言ウ」
パパゴブリンは頭を下げた。
「対シタモノハ用意デキナイガ、ユックリシテイケ…」
「じゃあ明日の朝までここで泊めて欲しいな」
リュトさんは言う。
「あの、ここまで来ておいてなんですけど、
ホントに大丈夫なんです?」
「……さあ?」
あっけらかんと答えるリュトさんに、
文句の一つも言いたくなりますが、ここはなんとか抑えます。
「好キナトコロデ休メ…」
そう言い残して、パパゴブリンは集落に戻っていきました。
「……じゃあ隅の方にでもテント張らせてもらいましょうか」
半ば諦めた私は、テントを張る準備に取りかかります。
……
…………
………………
ようやくテントを張り終わった後、
「料理ツクッタ!食ベテケ!」
子供ゴブリンが話しかけてきました。
……お腹がすいてきた頃ではあるんですが、
ゴブリン達が作る料理って……不安しかありません。
手を引かれて案内されると、
「お、来た来た」
なぜかリュトさんがすでに
岩を削った椅子に座って料理を待っていました。
「何やってるんですか、人が一人でテント張ってるときに」
「テント張るの面倒だから」
一人でテント張るのも面倒なんですから
手伝って欲しいんですけどね…
いや、ホントに。
そんなことを考えながら、リュトさんの隣に座ります。
「あ…」
大きな鶏肉の丸焼き――
ぶつ切りにされた焼き魚――
湯気立つ緑のスープ――
こういうの野性味溢れるというんでしょうか。
そんなかんじの料理が並べられていました。
「……思っていたよりは普通ですね」
「どんな料理を想像してたの?」
リュトさんが質問してくるその横で、
「オイシーー!」
子供ゴブリンの声。
他のゴブリン達も、テーブルに並んだ料理に
豪快にかぶりついていました。
おそるおそる、手元のスプーンで
緑のスープを口に流し込みます。
「お、おいしい…」
最初の予想に反して、おいしかったです。
スープの緑は野草の緑だったみたいです。
温かさの中に、草独特の風味が広がっていきます。
「口ニ合ッタカ?」
横からパパゴブリンが感想を聞いてきました。
「はい、コレおいしいです」
素直な感想を聞くと、
フンと鼻を鳴らし、自分の料理に向き直ります。
「うぅ……ん……」
突然眠気が襲いかかる。
私は隣のリュトさんの肩に寄りかかってしまいます。
「あ……ごめんなさい。
ちょっと眠くなってきて……」
「じゃあ、今日はもう休もっか」
ここまで大分歩いてきたので、
疲れていたのかもしれません。
「片付ケハコチラデヤッテオク…」
後片付けをゴブリン達に任せ、
椅子から立ち上がり、
リュトさんの肩を借りながらテントに向かいます。
テントに入って横になる私。
リュトさんの顔が視界に入ります。
「いつかの宿のときと逆ですね…」
「……そうだね」
興味なさげなリュトさんの反応。
苦笑する私。
そんななんでもないやりとりのあと、
私はゆっくりと意識を手放しました―――
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