第19話 ガルラン山脈

ディオンさんとリュトさんのいざこざがあった後、

目的地を目指していた私たち。


陽は沈みはじめていて、空は紅く染まっていました。


「今日はどこかで野宿しなきゃいけないかもしれないですね」


そんな私のつぶやきに反応することなく、

代わりにリュトさんは前方を指差した。


「見えたよ……ガルラン山脈」


ガルラン山脈――次の目的地≪遺跡都市シエンティア≫の手前にある大きな山。

ミュウミュウさんは洞窟があるって言っていたけど……


「ま、入ってから洞窟探せばいいでしょ」

「まぁ…そうですね」


山に入らないことには手がかりも何もつかめません。

暗くなる前に見つけないと。

そう思うと、私は少し早足になっていました。



15分くらいたったでしょうか。


木々生い茂る山の中を進んでいくと、やがて洞窟が見えてきました。

中は薄暗く、どこまで伸びているかは全く想像できません。

以前迷い込んだ《帰らずの洞窟》を思い出します。


「行くよ」

「え!?あ、はい。そうですね…」


洞窟に軽いトラウマがある私のことなんて気にせず、

リュトさんは洞窟の奥へ進もうとします。


「ウ、ウゥ…」


「??

 リュトさん、今何か言いました?」

「え?なにも?」


今、誰かの声が聞こえた。

リュトさんじゃないそうです。

じゃあどこから?


「イ……タイィィ」


また聞こえた。

すぐ近くに誰かいる。


「……フェルムの後ろの木の陰」


リュトさんの言葉にえっ?と声を出し振り返る。

そこには伸びきった草木隠れて木が数本生えている。

私は恐る恐るその後ろに回って確認すると、


「……だ、誰?」


子供が一人、足を押さえたまま木に寄りかかっていました。


大きく尖った両耳。

口の中からチラッと見える鋭い歯。

そしてなにより特徴的な、全身緑色の肌。


――ゴブリンの子供だった。

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