第16話 ミュウミュウ=シーファ
「はいは~い、地図持ってきたよ~」
次の目的地が決まり、申請書をミュウミュウさんに渡した後、
私は≪シエンティア≫までの行き方を尋ねた。
ミュウミュウさんは、受付から地図を持ってきて説明を始める。
「まずここが今あなたたちがいる≪港町ヴィーゼル≫ね。
で、ここから南にまーっすぐ進んだ先にあるのが≪遺跡都市シエンティア≫!」
≪ヴィーゼル≫から≪シエンティア≫までの道程を、指を地図上に滑らせながら話すミュウミュウさん。
ふと気付く。
「都市の手前に山があるみたいですけど、通れるんですか?」
「ここはガルラン山脈ね。確か洞窟があるはずだから通れるは通れ……うん?」
彼女は会話を止め、地図から視線をそらす。
「ミュウミュウさん?どうかしまし…」
「きゃあああああああ!! ひったくりよぉぉぉぉぉぉ!!!」
ギルドの外から悲鳴がした。
真っ先に駆け出したのはミュウミュウさんだった。
ダッシュであっという間に外に飛び出すと右方向――おそらくひったくり犯が走ってくる方へ向きを変え、立ち塞がった。
「ひったくりさ~ん、この町でひったくりなんかしたって意味ないよ~」
彼女のあとを追って出口を抜けると、
小太りした中年くらいの男の人が、
女物のカバンを手にこちらに向かってきている。
「うるせえ!怪我したくなきゃそこをどけえ!!」
男はカバンを持っているのとは反対の手をズボンのポケットに突っ込む。
そこから出てきたのは……
「な、ナイフ持ってますよあの人!」
刃渡り10cmほどのナイフを振り回しながら襲ってきた!
「ミュウミュウさん!危ないです!」
「だ~いじょうブイ!
ミュウミュウあんなのコワくな~い☆」
右手でVの字を作って余裕を見せるミュウミュウさん。
すると、
ヒュン――
「うおっ!?」
それは一瞬だった。
彼女は男の背後に回りこむと、そのまま右足でローキック。
ドシィン!!
バランスを崩し、後ろに倒れる男性。
ミュウミュウさんの手には、
さっき男がひったくったであろう女物のカバンが握られていた。
「くそ…うぉりゃあああああ!!!」
男は立ち上がると、今度は持っていたナイフでミュウミュウさんに斬りかかる!
――が、当たらない。かすりもしない。
がむしゃらに振り回してくる男のナイフを、
彼女は全てスレスレでかわし続ける。
それだけじゃない。
男が野次馬の方に近づきすぎないよう、
回避しながら誘導しているようだった。
「くそっ、くそっ、くそっ!なんで当たらねえ!?」
言いながら、振り下ろしてくるナイフを、
体を回転させて回避しながら、
「知らないんですかあ~?
ミュウミュウは
お触りは禁止されていま~~す♡」
ガンッ!
「う、うわぁ!」
今度は一気に接近してからのけたぐり。
男は前のめりに倒れ込む。
「ちくしょ…ぐぁあ!!」
倒れた男の背中に座り込むミュウミュウさん。
取り返したカバンのほかに、
いつの間に取り上げたのか、
先ほどまで男が振り回していたナイフを、
右手の指先でくるくると回していた。
「ひったくり犯、かくほ~~☆☆☆」
聴衆が見守るその中心で、
切っ先を自身の右目に向けるポーズをとり、ウィンクした。
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