第14話 リュトとフェルム②

「ほら、あそこが分かれ道」

「あー…」


洞窟を抜けてしばらく歩くと、分かれ道が見えてきました。

親切に看板まで立っています。


あのときは冒険者――もとい卵泥棒3人組の影になってて気づかなかったんだ…

ここに来てようやく気づくと同時に、自分の余りの短慮さに頭を抱えしゃがみ込む。


そんな私の状況などお構いなしに、


「こっちの道をまっすぐ行けば王都まで行ける。今度こそお別れだね」


そう言ってリュトさんは指を差す。

私もその方向へ顔を向ける。


「じゃあね。せいぜいスライムには気をつけなよ」


リュトさんはそのまま、≪港町ヴィーゼル≫のある道を歩いていきます。


「……」


私は、すぐに歩き出すことが出来ませんでした。

遠くなっていくリュトさんの背中を見たまま立ち尽くす。


どうして歩き出せないのか。

どうしてまだ諦めきれないのか。


考えが全くまとまらない。だけど――


「リュトさん!!」


私は叫んだ。声を聞いたリュトさんが振り向く。


「リュトさんは面倒くさがりで!私に全部任せっきりで!

 私の言うことなんて興味なくて!本当にひどい人だと思います!」


ずっと頭に溜め込んで、抑え込んでいた鬱憤を、

残さず全て吐き出した。


「でも!そんなリュトさんが!

 ここまで助けに来てくれたこと!

 本当に嬉しかったです!!」


嫌なこともあった。嫌なことの方が多かった。

でも――


「凄いって思いました!カッコイイって思いました!

 100年前の勇者もこんなだったのかなって!

 そんな風に思っちゃいました!!」


洞窟まで助けに来てくれたその背中が――

竜を圧倒するその戦いぶりが――

私が憧れた姿と重なったから――


「やっぱり私っ!こんなところで終わりたくない!

 諦めたくないです!

 今はダメダメな魔術師見習いだけど、

 もっといっぱい経験積んで、

 リュトさんと一緒に戦ってみたいです!

 もっと一緒に旅したいです!」


言ってしまった。

愛の告白みたいなことを大声で。

今、リュトさんになんて思われてるだろう?

でも思ってたことを、私の本心を、

黙ったままではいられなかった。


「はぁ…」


リュトさんが軽くため息をつく。

さすがのリュトさんでもこれは呆れちゃいましたよね。


「……任せるよ」



……


………え?


「……ん?遠くて聞こえなかったのかな?


 スゥゥゥ…


 フェルムに!全部!任せるよ!」


返事が大声で返ってきた。

しかも初めて名前で呼ばれた。


それに対して、


「それじゃあ!改めて!

 よろしくお願いしまぁぁす!」



大声に大声で返事をした私は、

そのままリュトさんの元へと走って行きました。

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