第13話 リュトとフェルム①
竜は倒れた。
それを確認したリュトさんは、
「つ~~か~~れ~~た~~」
大の字になってその場に倒れた。
あんな怪物と戦ったあとなのにホント呑気ですね、リュトさん。
一方私は、口いっぱいの薬草を食べ続けた結果、
ようやく立ち上がって歩けるくらいには回復した。
この薬草、実は私も初めて食べたんですけど……
すごいです。ポーションなんていらないですね。
……もう裏ポケットにほとんど残っていませんけど。
「あ、忘れるところだった」
リュトさんは起き上がり、こちらに走ってきた。
リュトさんが向かったのは、いつの間にか側に置かれていたカバン――が4つ。
「あれ?」
こんなにたくさんカバン持ち歩いてましたっけ?
特にこの大きなカバン3つ。
最近どこかで見たような…
「あ、森の中でぶつかった3人組!」
そう。リュトさんと別れたあと、あの森でぶつかった男性3人組のカバンでした。
それがここにあるってことは――
「…リュトさん、盗んだんですか?」
「ん?」
直球の質問をする私に、リュトさんはカバンを漁りながら答える。
「あー、違う違う。盗んだのはコレ背負ってた奴らの方」
「え?」
そう言いながら、袋状のカバンの一つをガバッと開ける。
「……!大きな、卵!?」
カバン一杯の大きさの卵が出てきたのです。
「鱗と同じ蒼い殻、間違いないね。サファイアドラゴンの卵だよ」
サファイアドラゴン――全身蒼い鱗で覆われ、その見た目を宝石の色に例えられて名付けられた竜。今まさにリュトさんが戦った竜をそう呼ぶんだそうです。
「コイツ、本来は人が近づいても襲いかかることは少ないんだ。
あんなに殺気立っていたのは、自分の大切な卵が盗まれたからだろうね」
「そんな、あんなに優しそうな人達だったのに…」
「卵泥棒ならまだカワイイほうじゃない?どこかの街かは忘れたけど、蒼い鱗がどんな呪いも病も治してくれるって言い伝えがあるらしくてさ。その鱗を手に入れることを専門にしたハンターだっているくらいだから」
「…リュトさん、意外と詳しいんですね」
正直驚きました。面倒なことは何一つやらなそうなリュトさんが、ここまで竜について詳しく知っていたなんて。あと――
「…どうして私なんかのこと、助けに来てくれたんですか?」
リュトさんの態度に本気で怒って、半ば八つ当たりみたいなことまで言って、
勝手にパーティを出て行ったのは私の方なのに。
「さすがに誰か死ぬかもって思ったら、いくら面倒でも助けないと寝覚めが悪いじゃん?」
あっけらかんとした答えが返ってきた。
「……ふふっ」
思わず笑ってしまいました。
“面倒でも助けないと”
それはこの人らしいなと苦笑いしたのか。
この人らしくないなと可笑しくなったのか。
それは私にも分かりません。
「…そろそろ出ようか」
「はい、リュトさん」
サファイアドラゴンの卵3つをカバンから取り出したあと、
今度こそ洞窟の出口へ歩いて行きました。
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