第10話 別れて…②

「リュトさんと来たとき、こんな道通ったっけ?」


道を進めば進むほど、森の奥へと迷い込んでいる気がする。

しばらく歩いて行くと、洞窟が現れた。


「……」


おかしい。最初に森を抜けたとき、洞窟なんて通った記憶なんてない。


道を間違えた?

でも分かれ道なんてどこにも……


「……」


普通ならここで引き返すのが正解なんだろう。

でもこのときの私は――


「……とりあえず進んでみよう」


通った覚えのない洞窟へと足を踏み入れてしまう。







「……真っ暗だなあ」


炎弾フレア】を灯り代わりに、真っ暗な洞窟の奥へと進んでいく。


時々つまずいて転びそうになりながらも歩き続けると、向こうから光が漏れているのが見えた。


「出口…かな?」


その光の方へと駆けていくと、ひらけた空間に出た。

天井を見上げると、巨大な結晶が氷柱のように伸びていた。どうやらそこから外の光が差し込んでいたようです。


ふと下をみると、大きな足跡があった。

私一人がすっぽり入ってしまうほどの。


「…やっぱり引き返そう」


出口はなかった。巨大な何かがいる。

私はようやく冷静になり、来た道を戻ることにした。


そのときだった。


グオオオォォォォォン!!


洞窟の奥から響く声。いや、これは声というより轟音。


ズシン、


ズシン、、


ズシン、、、


完全に足がすくんで動けなくなった私は、ゆっくりと振り返る。


光の届かない暗い洞窟の奥から、


通り穴をギリギリ通れるかという巨大な竜が、


唸り声をあげて近づいてきた。






―― ≪港町ヴィーゼル≫ ――


「…さて、これからどうするかなあ」


フェルムが洞窟へ踏み入った頃、宿を出たリュトは途方に暮れていた。


「そういえば…」


今になって気がついた。お金は全てフェルムに持たせたままだったことに。

だがあのあと、フェルムがどこに行ったのかも分からない。

もう故郷に帰っているのだとしたら、その場所を知らない自分にはもう探す手段がなくなる。

突然の無一文。さすがになんとかしなければ。


「…クエストでも見てくるかな。面倒だけど」


この町にはギルドがある。

彼女を追いかけるよりクエストをこなす方が確実にお金が入る。

そもそも彼女に追いついたからといって、お金を分けてくれるとは限らないのだから。

さっそくギルドへ向かおうと思ったとき、


「ホントに大丈夫かなあ…」

「大丈夫じゃねえの?あの、家に帰るだけって言ってたし。見た目からして魔術師ってかんじだろ?」

「けどさ!あの娘、≪帰らずの洞窟≫の方に走ってったじゃん!今あの洞窟に行ったら――」


「…あー、そこのお兄さん達?」


リュトは、港町に入ってきた3人組に声をかけた。


「今の話、詳しく聞かせてもらえないかな?」

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