第5話 初めての戦闘②

初めての魔物との遭遇。

そんな状況で、私はスライムの方ではなく、リュトさんの方を見ていた。


「あの、リュトさんは戦わないんですか?」

「うん、だって面倒いし」

「スライムといっても魔物ですよ?」

「知ってるよ?」

「私一人で戦えってことです?」

「………」


――これ、どっちかが折れないと終わらないやつだ。


「はぁ、分かりましたよ。あのスライム、私一人で相手します。」


改めてスライムに向き直る。

向こうも戦う気マンマンだ。(こっちを待っててくれてたけど)


「――行きます!」


私は杖に魔力を込める。

うまく説明はできないんだけど、魔法を撃つ!って念じながら腕に力を込めると、魔力が杖に集まっていく――という解釈で今までやってきた。

そのまま魔力を杖の先端に収束させ、そして――


「【炎弾フレア】!!」


杖から握りこぶし大の火球が放たれる。

そのまま真っ直ぐスライム目掛けて飛んでいき、


ドオォォン!


――躱された。


「あ、あれぇ?」


避けたスライムは、右に左にプルプルと体を揺らしている。


「も、もう一度!【炎弾フレア】!!」


ドオォォン!ドオォォン!ドオォォン!


2発、3発、4発と火の玉を撃ち込むも、その全てが躱される。


「なんでぇ~?」


もう一度魔法を唱えて…

その直後、スライムが私に突進してくる。


「え?ふぎゃっ!」


ブチュッ


顔面直撃。

痛――くはないですが、突然の反撃に後ろに転倒してしまう。

対してスライムはあいかわらずプルプルしている。

すると後ろで見ていたリュトさんが、


「聞くけど、動く的相手に魔法を当てる訓練ってしたことある?」

「えっ、そ、それは」


実はほとんどしたことがない。マティーナ村にいたときはカカシ相手(もちろん自作)に練習してただけだったし、試練では動いてはいたものの、かなりゆっくりだったため、対した障害にはなっていなかった。


「そ、それでも負けません!なんどもやってればいずれギャッ!」


ブチュッ


再びスライムの体当たり。今度はお腹目掛けて飛んできた。


「何度も挑戦するのはいいけど、変な方向に飛ばさないでね。

――火事になるから」

「き、気をつけます…」


それから、私とスライムの不毛な戦いは――飽きたスライムが逃げ出すまで続いたのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る