第1話 二人の邂逅①

「着きましたよ、フェルム様」

「わぁ…」


ほどなくして、私を乗せた馬車は≪王都アルフィード≫に到着した。

たくさんの人が街を行き交い、店もたくさん開いている。

≪マティーナ村≫のような田舎では考えられないくらいの賑わいだ。


「こんなに賑やかな国の王様って、どういった人なんですか?」


私はなんとなく、向かいに座るキースに訪ねてみた。


「歳はフェルム様とさして変わらないと思いますよ。先日先代の王がご病気で亡くなられ、唯一いた娘さんが代わりに王位につくことになりまして」

「え?今の王様って女性なんですか?しかも歳も変わらないって…」

「今はあくまで代理ですが、彼女も王家の名にふさわしい慧眼けいがんの持ち主でございます。あと数年先であったなら、正式に王位継承していただくことも出来たのでしょうが」


表情をあまり変えることなく、彼は話を続けた。

ここまで言わせる人なんだから本当にすごい人なんだろうなぁ。歳近いからって失礼のないようにしないと…


そのまま馬車に揺られること数分、大きな門の前で停止した。

「こちらが≪アルフィード城≫でございます」

「……おっきい」

全体的に白く、天まで届くかと思えるほどの巨大な城を前に、私はそれしか言えなかった。


キースさんに連れられ、城内の廊下を歩いている途中、

「そういえば、勇者候補がもう一人も、今日こちらに来て頂いているのです」

「あ、そうなんですね」

そういえば100年前も、最初は成績優秀な2人だけで旅に出て行ったって聞いたことがある。

「彼はもう王室にて待機なされているかと」

ということは男性なんだ。きっと前の勇者みたいな正義感に溢れた人なんだろうなあ。

――なんて、脳内で理想の勇者の姿を妄想していると、

「こちらが王室です」

一際立派な扉の前で止まった。

「さ、王と勇者様がお待ちですよ」

「は、はい」

いざ目の前にすると緊張で手が震えてきた。

手の震えを必死に抑え、その扉に手をかける。


ギィィィィ…


「あら、ようこそおいでくださいました」


幼子のような声がした。

扉を開けた先に見えた先には、


まだ世界を知らなそうな少女が、

純白のドレスを身に纏い

聖女のような微笑みを讃え、

自分の背丈より大きな玉座に座っていた。


そして王の横に立つ女性の従者、ともう一人――


「あー、ひょっとして、君が一緒に旅するっていう――」


勇者に選ばれた少年がいたのでした。

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