旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第357話居城

春日虎綱「二俣につきましてはこちらが折れる事にしました。」

真田幸隆「既に家康が調略した？」

春日虎綱「いえ。それはありません。（二俣城主の）松井氏は氏真からの信頼厚く、降す事は出来ていません。」

真田幸隆「そんな面倒な場所ならうちに回せば良いものを……。」

春日虎綱「『あそこはうちが攻め取る。』と家康は申していました。」

真田幸隆「うちがそこを拠点にするのを恐れている？」

春日虎綱「そうなります。」

真田幸隆「少なくともお前が管轄している内は、それは無いだろう。」

春日虎綱「確かにそうなのではありますが、家康には家康の事情がありまして。」

真田幸隆「どのような事情だ？」

春日虎綱「どうやら家康は遠江に拠点を移そうと考えているようであります。」

私（村上義清）「家臣に『殿が全ての責任を持って下さいね。』とでも言われたのか？」

春日虎綱「それは殿だけの話でしょう。家康は違います。遠江の経営に本気に乗り出すための移転であります。」

真田幸隆「その候補地は？」

春日虎綱「家康は『見付』に新たな拠点を設けようと考えているようであります。」

　見付はかつて遠江の国分寺が置かれた場所。

真田幸隆「川の上流に位置する二俣城は是が非でも確保して置く必要があるな。」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「となると家康はうちの事を仮想敵国と見なしていると言う事にもなるな。」

春日虎綱「否定はしません。」

真田幸隆「奥山と天野をうちに渡したのも、我らが彼らの統治に手間取り遠江の要地に入る事が出来ないように仕向けている？」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「何なら二俣から支援物資を送り込む事も厭わない？」

春日虎綱「可能性はあります。ただそんな事をして来ましたら、こっちはこっちで浜名湖北の陸路を封鎖しますけどね。」

私（村上義清）「しかし何故家康は危険を冒してまで最前線に拠点を移動しようとしているんだ？」

春日虎綱「一言で言えば『三河で家康が自由に使える土地がほとんど無い。』事が原因では無いかと思われます。」

　三河の大半は家康の親戚が抑えています。

私（村上義清）「自分（家康）が代表者である以上、困っている者を助けなければならない義務を負っている。負っては居るが、よくよく考えて見ると『あれ！？あいつの方が税収あるよな。』と言う事が多々発生しているのかもしれないな……。」

真田幸隆「うちではあり得ない話でありますね。」

私（村上義清）「（ん！？）」

春日虎綱「義元の代から支配が強化され、その義元の死に巻き込まれ。更には氏真の粛清により遠江はかなり整地されている。直接支配し易い環境が整っています。」

真田幸隆「自分がやりたい事をやるために家康は遠江を奪い、拠点を置こうと考えている。」

春日虎綱「そう考えて、間違い無いと思います。」