点数

 私は山で育った。白い雲、高い空、色んな鳥の声。私はその景色を上手に説明することはできないけれど、私は私の故郷が好きだった。退屈だと思ったこともなかった。

 テレビも家になかったし、友達の家に行って、見たときもなんだかヘンテコで興味なかったから、都会に憧れることもなかった。

 

 歌うのが好きだった。誰もいないところで、お母さんに教えてもらった歌をせいいっぱい歌う。時々哲司おじさんが聞きに来てくれて「ふぅちゃんは上手だなぁ」と褒めてくれる。私は嬉しくて、恥ずかしくて、被ってきた帽子で顔を隠す。そのあとに、お辞儀をする。


 中学生になって、百人も同い年がいる学校に入ることになった。そこで初めて、カラオケに誘われた。

 私の番が回ってきて、私は緊張しながらもいつものように大きな声で、一生懸命歌った。

 72点。私はその点数が何を意味しているのか分からなかった。隣に小さく「平均83点」と書いてあった。みんな、苦笑いをしていた。

「音程ガー」

「ビブラートガー」

 ショックで、新しくできた友達の言葉は私の耳に届かなかった。


 家に帰って「もう学校に行きたくない」とお母さんに言うと「義務教育だからねぇ」と言われた。

 理不尽だと思った。

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