第9話「いや、時計台ちっさ」②


 そして、まず俺たちがやってきたのは北海道の象徴でもあり、札幌の顔でもある歴史的建造物「札幌市時計台」だった。


 ただ、俺の予想。


 いや、札幌に住んでいた時期は駅前を通るとよく目にしていたから知っているが、目を疑いたくなるようなが目立つ建造物でもある。通り過ぎる度に外から写真を撮る外国人観光客や国内の観光客も目にするが、案外評判は悪くはないらしい。


「ここが、時計台……?」


 俺の隣でスマホ片手に首を傾げたのは霧雨麗奈だった。

 

「まぁ、そうだけど、どうしたんだ?」


「え?」


「ははっ……」


 俺が質問に質問で返すと霧雨さんは素っ頓狂な声を上げた。そんな声を聞いて、後ろで失笑する清隆君と、同じように首を傾げる斎藤さんもちらりと視界の端に見えた。


「本気?」


 どうやら、反応から察するに俺は間違ってはいなかったらしい。

 やはり、小さいようだ。


 もともと俺自身、道産子のため別にディスるつもりはないがこれはさすがにおかしいと思っていた。馬鹿にすると言うよりかは心配しているというか、絶妙な場所に絶妙な大きさで変な雰囲気醸し出しながら建てられているため、変な気持ちになるのだ。


「真面目だが?」


 しかし、ここで真正面から肯定するのも面白くはないため俺は意地悪に否定した。


「そ、そう、なの……?」


「もちろんな」


「ぁ、うん……そっか……」


 声色が漠然としている。

 そして、同時に目の色も薄くなっていた。


「なんか……ちっさいね」


「だな」


「なんか、少しだけ幻滅したかも……」


 寂しそうに言う霧雨さんに俺は何とも言えなくなるが、そこで状況を理解したのか清隆君が言い出した。


「まぁ……ここってよく言われるからね、あれだよ、赤レンガとか札幌駅とか狸小路とか、いろいろあるからそっち行かない?」


「っお、ありだね‼‼」


 頼りがいがあるのはやはり清隆君だ。

 それを自慢げに思ったが、札幌に住んだことのある俺がそんな言葉すら掛けれないことで窺われるコミュ力に俺も俺で悲しくなった。


 斎藤さんも元気よく返事をして、急遽俺たちの行く先が札幌テレビ塔に変更された。


「名案だね清隆君!」


「まあね、それなりに走ってるから……」


「じゃあ、そこで決まりだな」


「うん昇二! 札幌なら清隆君と昇二だし、任せたぞ!」


「ああ」


「——よし、じゃあ行くぞぉ!」


 まったく、元気のいい女の子だ。

 プルンと揺れた胸もそうだが、プチプチとしてそうな唇もまた魅力的で、純白で雪の様な髪にもかなりあっている。


「私もあれだよ、コスメとか見に行きたいかもなぁ……」


「大丸かな、それは?」


「お、ほんと? さっすが清隆やんね!」


 後ろで聞こえてくる女子高生な会話についていけない俺は隣を歩く元気な霧雨さんを見て、安心した。




【豆知識】

・「札幌市時計台」:札幌市中央区北1条西2丁目にある重要文化財。正式名称は旧札幌農学校演武場で、時計台の名称で知られている。個人的な意見ですが、周りに高層ビルが聳え建っているので少し見劣りすると思います。ただ、内装はしっかりしていて、貫禄すらしっかりと感じられるかと思います。外国人観光客も多いので、平日に行ってみるのがお勧めです!



<あとがき>


 皆さん、こんばんは。

 歩直です!


 第9話「いや、時計台ちっさ」はどうでしたでしょうか? まだまだ修学旅行は始まったばかりなので彼らの行く末をゆったり見守ってください!


 ところで、たいあっぷの方の進捗ですが、何回も言っている通り、この作品「隣の席の道産子天使ちゃんが可愛すぎる!」をたいあっぷというサイトで公開いたします!


 たいあっぷの方では表紙絵、口絵、そして挿絵などが見れたり、この原稿とは少し違ったお話が楽しめます。読者様からの評価が良ければ二巻以降は電子書籍化も狙えるので是非、サイトの方が完成する6月あたりから読んでみてください!


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