第7話 「天使ちゃんは微分に苦しむ!!」4
それからすぐに期末試験の日がやってきた。
土日を挟んだせいか、先週末にあった班決めの事も忘れていた。しかし、それも一瞬で思い出す出来事が起きるのは自明の理だったかもしれない。
学校に着き、席に座ると気のせいか俺に向かう視線が一つだけ増えていた。
一つは霧雨さんだ。
でも、もう一つはなんだろう。
「……えっと、微分は接線のがえっとぉ……ここがこうなって、あ、いや、kっちがこうなるんだ……」
隣には数学Ⅱの教科書を机に広げ、最後の足掻きに取り掛かっている霧雨さん。そして窓側の最前列にて静かに勉強をしている清隆君、友達と話しながら緊張をほぐしているクラスメイト。
ここまではいつも通りの風景であった。
しかし、霧雨さんの前の席。
そして俺の右斜め前。
「——私にも、教えてくれない? 勉強をさっ」
「え、いや……」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべた彼女、修学旅行の班決めにて急に現れたのが斎藤静香だった。漆黒色の髪をスラっと腰上まで伸ばし、霧雨さんに負けず劣らずの豊満な胸。少し釣り目で何かを企んでいるような真黒な瞳。そして、含みのある笑顔が目立つ。
「ええ~~、あれでしょ? 私、いっつも霧雨さんが教えてもらっているの知ってるよ?」
「それは、そうだけど……だってもうテストじゃん」
「明日のさ、化学とか教えてほしいんだよね? 私さ、理系科目苦手だし?」
ニコッと微笑む。
一切退こうとしないその姿勢に俺も押されていた。
「ま、まぁ……俺は良いけど、こ、こんな時にいいの?」
「なんか、嫌なの?」
「え、いや別にそう言うことじゃ——」
俺がもじもじと受け答えしていると隣から救いの矢が立った。
「ねぇ、あなた急に昇二いじめて何がしたいの⁇」
「——勉強教えてほしいんだけど?」
「勉強って、そのくらい独りでやりなさいよっ!」
元気よく言い返してくれるのは俺としても嬉しいのだが——お前が言うな。
「あなたも教えてもらってるじゃない? 私だって、頭いい人に教えてもらいたいのよぉ?」
「いや、べ、別にあれは——教えてもらっているわけじゃないわっ」
「じゃあ、なに?」
「あ、あれは私が教えてあげてるのよ!」
「「⁇」」
先ほどまで押されていた俺でさえも、こればっかりは斎藤さんと見つめ合った。
「教えてあげたと——思うけど」
「っ……ちがう」
「……そうか、ならもう教えないぞ」
「——ごめんなさい、嘘です、教えてもらってましたっ‼‼‼‼」
瞬間、縋りつく霧雨さん。
その豊満な胸に浸かった俺の顔。どうにか赤くなりそうな頬を無感情で乗り越える。
「じゃあ、私も今日行っていい?」
「え、今日なの? 一人で勉強した——」
「へぇ……霧雨さんには教えるのに、私には、ね」
「っちょ」
「やっぱりそうかぁ……そうなのかぁ……せっかく一緒の班になれたんだし、楽しもうかなって思っていたのになぁ~~」
目を瞑り、口を手で隠しながら言う彼女。
その下の口が笑っているように見えたが周りの生徒たちの注目が急に集まった。
仕方ない、そうするしかないと。
「わ、わかった——よ」
俺はそう言うしかなかったのだ。
いやしかし、彼女は言ったい何者なんだ?
どこかで見たような気がするようでしないような……少し頭が痛くなる。急に話しかけてくるし、急に好意的なモノを向けられるし、俺にも理由が分からない。モテ期か? と言われたら鵜呑みにしちゃいそうになるよ、俺。
誰か、マジで教えてくれ。
<あとがき>
皆さん、お久しぶりです。
歩直と申します!
重大なご報告というか、お知らせです!
この度、こちらの作品「隣の席の可愛い道産子天使ちゃん!」の表紙をイラストレーターの【なおすけ先生(@nao_suke_twt)】に描いてもらいました。
イラストの投稿URL
「https://twitter.com/nao_suke_twt/status/1377273644041207821?s=20」
GOOGLEなどで上記を検索してもらえると出てくると思うので気になった方は是非見てみてください! できれば拡散してほしいです!
口絵、挿絵も書いてくださるので完成まで今しばらくお待ちください!
注意:たいあっぷの読者ページは6月に完成します(4/1現在)
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