第5話 「テスト前の息抜き」2
翌朝、学校に着くと……俺の席の周りにはこのクラスの陽キャ軍団が集まっていた。
「……な、なん、で」
その瞬間、苦い思い出がフラッシュバックする。中学、高校とああいったチャラそうでだらしない見た目の奴に俺はいじめられていた。そんな記憶が俺の体を硬直させていった。
やばい。
脳天から足先までこれっぽっちも動かない。ゴクリと飲んだ唾、それが胃に沈んでいくのがずっしりと伝わっていく。
「お~~、来たかい! 転校生君!」
誰かも分からない。
こっちに来てからはずっと霧雨さんと一緒に居たため、正直クラスメイトの顔と名前も一致していない。
だからこそ、誰か分からないやつに揶揄われるのはものすごく怖いのだ。
「あれどったん~~~、あづましくないな~~」
「え、えっと……そ、s……」
「ん、どうしたどうした?」
一体、俺はこの後何をされるんだ。
そんな疑問がふと頭を
トラウマと想像が重なり、頭の中の不安がどんどんと膨張していく。
ただ、一言。
怖い、怖かった。
「あれだろ~~、最近霧雨ちゃんと話してるじゃ~~んな?」
「俺たちも仲良くなりたくてよ~~、霧雨ちゃんとさっ!」
「しっかしなぁ、あの人って全然話してくれないからなぁ、俺たちと」
「だったのに、転校生と話すなんて……悲しいぜ」
「そ、それ、それが……なんです、か?」
俺は拳を握り締めて、勇気を振り絞って口に出す。
「それが、何かって——分からない?」
「そんなのもちろん、霧雨さんと話したいんだよっ!」
「ミスコンに出た女の子と仲良くなりたいのよ~~!」
霧雨さんの事だったのか。
でも、霧雨さんにはミスコン自体に苦い思い出がある。そんなことを今更、穿り返される……ましてはこの教室で。そんなことはあってはならない。
そして、気が付けば。
俺は反射的に口に出していた。
「——やめてくださいよ、別に俺だって…………」
「「「「あ?」」」」
途端、彼らの眼力はすり替わった。
さっきまでの控えめな視線から、睨みつけるような重い視線に変わっていた。
「っ――――!」
俺が怯んで、一歩後ろに下がる。
教室にいる数人のクラスメイトは少し怪訝な視線をこちらに向けていた。
いつか見たこの光景。
まるで、いじめられるのを「可哀想に」と見つめる
「——やめろよ」
しかし、その瞬間。
俺の前に誰かの背中が割り込んだ。
「ああ?」
「おい、困ってるだろ高橋が」
低く、そして―—ダンディな、男子高校生にはあるまじき声だったがその時の俺には冷静に判断しきれていなかった。
「だったらなに、てか、お前誰?」
「おい、部外者が何よ?」
陽キャ集団の声の重みが増していく。
いや、ここまできたら彼らは陽キャではない。ただのDQN《ドキュン》だ。
「……そのっ」
「いいから、」
「おいおいおい、てめぇは何なんだよ⁉」
クソ怖え。
しかし、彼はそんな言霊には屈せずに。
「いいから、黙ってろ。帰れ、クズ」
「なんだてm——‼‼‼」
そして、刹那。
その中から男一人が前に飛び出し、拳を構えて飛び込んできた――――かと思えば。
瞬きを一度する間に、その男が倒れていた。
「——え」
「った……く、そっ——いてぇ……」
「おいっ——! 菊田‼‼」
「もう関わんな、お前らのクラスここじゃねえだろ?」
「っ……てめぇ!」
「——ぶっ飛ばすぞ⁇」
しかし、まるで覇気でもかましたかのように背中が震える。その正面にいたDQNは目が点になっていた。
「っち……いくぞ」
「あ、ああ」
「っち」
「もう来るんじゃねえぞ」
そんな彼の眼圧に怯んで教室を出ていった。
最後までに睨みつけていた彼はDQNが教室を出ると、はぁ……とため息を漏らし、こちらを向く。
「——おい、大丈夫か? 立てるか?」
「あ、うん……」
彼の手を掴んで引っ張られるように俺は立った。
「いやぁ、朝から面倒だよな! あんな奴らが来るんなんて……なかなか忙しそうだぜ、転校生よ!」
「い、いや……別に俺に用があったわけじゃ」
「ははっ……なんかあったら言ってくれ」
「え……う、うん」
「そうだ、僕は
「お、おれは……
「おう、昇二! これからはよろしくな‼」
「うん……」
一方的な圧に少しだけ怯んでしまっていたが、ニコニコと笑う吉田君に俺は懐かしい安心感を抱いていた。
<あとがき>
さあ、こんばんは。
歩直です。
今回はシリアス回でした。どうでしたでしょうか? こういう明るい作品にもシリアス回は必須だと思うのですが、甘党の皆さまに刺さらなかったのならごめんなさい! でも、彼に友達を作りたい。その一心で書き上げたのでここから先も読んでいただければ幸いです。
PS:皆さんは今季、何のアニメ見てますか? 僕のおすすめは「ホリミヤ」です!
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