第2話 「道産子可愛いミスコンちゃん!」1
そして、放課後。
俺と霧雨さんは二人でサイコーマートに到着していた。
「サコマ」
「うんっ。もしかして、来るの初めて?」
「え、いや、そういうわけじゃ」
別にそう言うわけではない。
しかし、俺は確かに驚いていた。
なぜなら……。
「コンビニが……夜22時まで……」
そう、ご当地ローカルコンビニがあることは知っていたが札幌にあるサイコーマートはさほど多くはない。それに札幌にあるコンビニは24時間経営ではなくとも深夜2,3時まではやっている。
「あれ、そうじゃないの?」
「え、でも、コンビニって最悪深夜までやっている気が……」
「……っ」
俺がそう言うと、彼女は固まった。
ほんの今まで、俺の隣でニコニコと、肩と短い髪を揺らして歩いていた彼女が呆然と口を開けて立ちすくんでいた。
「ど、どうしたの?」
「…………コンビニって、深夜にやってるの?」
衝撃的も何も、よく分からなかった。
「え、やってないの?」
こっちが聞きたかった。
「や、やってないよ……」
「まじか……」
「……びっくりやんな」
「そ、そうなのかな……普通だと思ってた……」
「ふつっ————まさかそんなわけないよっ‼‼」
驚愕していた。
まるで、ツチノコでも見つけたかの勢いで彼女二歩後ろに下がる。そんなにめずらしいことではないと、いろいろな県をまたいできた俺はそう思っていたが、意外にも世界は広い。
「まぁ、あんまり夜にはいかないけどね」
「え、まじ!?」
「え」
「行くじゃん、夜! 七時くらいにはさ、友達とみんなで!」
「七時か……それは確かに行くかもね」
なんだ、びっくりした。
見た目からしてもそう見えて不思議はないが、七時くらいに出歩くのは普通なはず、きっと彼女はギャルとかではないだろう。
「でしょ~~、あれかな、じゃあさ、今日とか夜空いてない?」
「今日のか、どうかなぁ~~、一応勉強しようと思ってたんだけど……」
「勉強~~、そんなのやんなくていいやん!」
「え、だめだよ、絶対したほうがいいよ」
「だってさ、数学なんて社会出ても使わんやん? そう思わん?」
「いや、使うと思うけどな……パソコンとか研究とかするなら絶対使うし、物理とかも科学とかも使うと思うよ?」
「っげ、で、でも私は化粧品会社に入りたいし、技術さえあればいいもん……」
「化粧品会社入りたいの?」
「うん、私、美容系の話好きだしさ、いっつもお世話になっているから入りたいな~~って考えてる!」
「た、確かに……可愛いし、凝ってそうだね……」
「っ————」
その瞬間、彼女はパぁーーっと顔を明るくして、俺の両手を握って大きな胸を押し付ける。
「うわっ」
「ほ、ほんとっ⁉ 私、可愛い!?」
「か、可愛いと、思うよ……?」
「化粧もしっかりしてるってわかるっ⁉」
「う、うん……結構、気合入ってるように……見える」
それにおっぱいの谷間が見えるし……。ちょっと、あそこがやばい。俺、童貞だぞ、それ以上はやば——
「う、う、う……嬉しいっ‼‼‼‼」
彼女はニコリと満面の笑みを見せた。セコマの前で、特に何ともない、雰囲気も糞もないような場所なのに——なぜか、俺の心を明るく照らす。可愛くて、綺麗で、それでいて凛々しいような————最強の笑みだった。
「そ、そうだね……」
「えへへ……なんか、うれしーな」
むにっとした感触が俺の胸と手を包み、ドキドキとなっている心臓の鼓動までが手を伝わって聞こえてくる。やばい、顔が熱い。
「あ」
すると、彼女はそれに気づいたか、ビクッと肩を震わせておろおろと手を離した。
「ご、ごめん……」
先ほどの威勢は一体全体どこに行ってしまったのか、頬が赤くなって額からは汗がにじんでいる。
「ははっ、可愛いんだね」
「んぐっ!? ひ、ひどいよう……」
「あっ! いや、なんでも‼」
「買わないならな、出て行け! クソガキどもっっ‼︎」
その時、俺たちは気づいた。
ここはまだ、サコマの中ではなかったということを。
「「すいませんっ‼‼」」
音速の如く、頬を赤くした俺と霧雨さんはセコマの中へ入った。
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