彼とサボテン
頭野 融
彼とサボテン
大学院生の彼は女子たちに人気だ。頭は良いらしいが、それくらいしか、彼にまつわる情報はない。いつも寡黙で、そのミステリアスな雰囲気が、また魅力なのだとか。
彼は割と頻繁に告白されるが、その彼女も長続きしない。もって二か月だ。だが、けんか別れなんてのはなく彼女の方があきらめる。彼のことが嫌いになったとかではなく、この人にはもっとふさわしい人がいる、と思い始めるのだ。
彼は家でたくさんのサボテンを育てている。彼が家ですることはもっぱら、水やりなどのお世話だ。彼女たちはいっぱいのサボテンを見て驚く。あまり彼に話しかけても満足な答えは得られない、と家に行く仲になるまでの日々で知っているのだが、つい聞いてしまう。
「なんで、こんなにいっぱいあるの?サボテン、好きなの?」
「うん。みんな大切なものだよ」
「そうなんだ。」彼女たちは彼の秘密を知ったようで、嬉しくなる。
「あ、でも、僕の家にサボテンがいっぱいあるって誰にも言わないでね。気持ち悪がられるから。」
「そうかな、、、。うん、分かった。」この彼の言葉に彼女たちはもっと嬉しくなる。
多くの場合は、こういったやり取りのあと、数週間ぐらいで二人は別れる。
そのときに彼女はサボテンを持ってくる。
「大切にしてね。じゃあね。」そう言って彼女らは立ち去る。
彼は、サボテンをコレクションの中に加える。
彼とサボテン 頭野 融 @toru-kashirano
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