ルシファーとの闘い上
俺達は王室に突入する。出入口が爆砕されていた。間違いなかった。既にルシファーは王室まで到達しているのだ。
間に合え。俺達はその一念で走り続ける。
「セフィリス!」
部屋に入ると既にルシファー……と思しき少年がいた。そして地面にへたれ込んでいるフィオナ姫の姿も。
「はい! トール様!」
具体的に指示しなくてもセフィリスは理解した。弓聖セフィリスは矢を放つ。矢はルシファーの凶行を阻害するべく、地面に突き刺さった。
「なんだ……まったく、人のお楽しみを邪魔しやがって」
ルシファーが毒づく。
「君はトール君じゃないか。ジョブ・レンダーのトール君。噂には聞いているよ。全く、ラカム達も本当に役立たずだね。せっかく僕が力を授けてあげたのに。始末できないなんて」
「お前が魔王軍の四天王のルシファーか」
「そうだよ。僕がルシファーだ。魔王軍四天王の一人。堕天のルシファー。もういいよ、トール君。君は僕自らが引導を渡してあげるよ。君は僕たちが仕える魔王様の大きな障害になりそうだからね。君のジョブ・レンダーとしての力はとても危険なんだよ」
「来るぞ! エミリア! セフィリス! 敵は一人だが相当に強い、侮るなよ!」
「わかってるわ! トール!」
「はい! トールさん!」
「準備の時間なんて与えないよ。こちらから行かせてもらう」
ルシファーは手に闇の力を込めた。手が闇の力に染まり、まるで刃物のように鋭利になる。
キィン!
剣聖のジョブを自己貸与(セルフレンド)している俺はルシファーの手刀を受ける。甲高い音が王室に響き渡った。
こうして俺達とルシファーの闘いは始まったのである。
「トール!」
「トールさん!」
俺とルシファーが密着していると二人も援護がしづらいのだろう。手をこまねいている様子であった。
「それがジョブ・レンダーとしての力か。面白いじゃないか」
「くっ……」
「もっとだ! もっと見せてみろよ! ジョブ・レンダーのトール君!」
「なっ!」
ルシファーは距離を置いた。
「暗黒結晶弾!」
ルシファーは無数の黒い結晶を放ってきた。それは弾丸のような速度と威力で俺達に降り注いでくる。俺は剣聖の職業(ジョブ)を返却(リターン)した後、ロイヤルガードの職業を貸与する。ロイヤルガードは盾役の職業である。
俺は巨大で堅牢な盾を持ってルシファーの遠距離攻撃――暗黒結晶弾を防いだ。
「ははっ……なんでもできるんだな、君は」
ルシファーは笑う。
「エミリア、セフィリス。お願いがあるんだ」
「お願い、どんな?」
「国王陛下とフィオナ王女が近くにいるだろ。俺が時間を稼ぐ。だからそのうちに二人を安全なところまで避難させて欲しい」
王城にはまだ多くの魔物や魔獣が存在している。国王とフィオナ王女だけでは危険が伴う。ルシファーを倒したところでそういった魔物達が消滅するとも限らない。
「け、けど、それじゃトールが一人で戦うことにならない?」
「俺なら一人でも何とかなるさ」
「わかったわ。国王様と王女様を非難させればいいのね」
「わかりましたわ。トール様」
こうして二人は国王とフィオナ姫のところへ向かった。
「ちっ! 余計な真似を! そいつは僕の玩具なんだよ! 邪魔するなよ!」
「させるかっ!」
俺はルシファーの前に立ちはだかる。
キィン!
ルシファーの手刀を盾で防いだ。
「邪魔だ! ジョブ・レンダー!」
「ここは絶対に通さない!」
こうして、俺とルシファーの一体一での闘いが始まったのである。
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