国王と王女フィオナを危機から救う
「な、なに! 王城に侵入者だと!」
使用人からの報告を聞いた国王は取り乱していた。
「は、はい! どうやらそのようです! 侵入者は恐らく魔王軍の者だと思われます。多くの魔物や魔獣を引き連れ、この王城を荒らしまわっています。数が多く兵士達では対処しきれていません」
「くっ! なんということだ! 魔王軍めっ……おそらくはこの王城にある魔石(スフィア)が目当てなのだろう」
魔石。1000年前に魔王の力を封印したものだ。魔王軍はそれを狙っているのだろう。
「お父様……魔王軍がこの王城を襲っているのですか?」
王城で起こっていることを知った国王の娘――フィオナが怯えていた。
「安心しろ。フィオナ。お前の身はわしが必ず守る」
国王は気を取り直し、フィオナにそう強く語り掛ける。父として娘を不安にさせたくはないのであろう。
――と、その時のことであった。
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
という強烈な爆発音が響いた。王室の出入り口が爆砕されたではないか。
「な、なにやつ!」
「いたいた……ここにいたんだ。国王様。それに王女様まで。クックック」
現れたのは美しい少年であった。だが、どことなく人間のような雰囲気はしない。その笑みには温かみはなく、冷たさ以外に何もなかったのである。まるで機械か何かを相手にしているかのようだ。人間のような感情は見受けられない。
この状況下で現れたのだ。間違いなく魔王軍の者であろう。流石にその程度の推察、国王にはついていた。
「い、一体何者だ! 貴様は!」
「僕は魔王軍の四天王ルシファーだよ。国王様。クックック」
あっさりと少年は名乗った。ルシファーというらしい。
「何が目的だ! なぜ我らの国を! 城を襲う!」
「理由なら自分でわかってるんじゃないの? クックック」
「魔石か……やはり魔王の力を封じた魔石が目的なのか?」
「ご明察。クックック。ところで、なんで僕が簡単に名乗って、目的まで喋ったかわかる?」
「ま……まさか」
「そう、そのまさか。これから死ぬやつに何を言ったって関係ないだろ?」
少年は美しい顔を醜悪に歪めた。
「い、いやっ! お父様を殺さないで!」
「んー……良いことを思いついた。娘のフィオナ姫だったよね。君をお父さんより先に殺してあげようか。親より先に子供が死ぬなんて親不孝だからね。その親不孝を存分に味合わせてあげよう」
「な、なんだと! この鬼め! 悪魔め! 殺すならわしから殺せばいい!」
「だめだよ。そんな楽して死んじゃ。最愛の娘を無残に殺されて、絶望に染まりながら国王様は死ぬんだ。じゃないと面白くないだろ? クックック」
「や、やめろ! この鬼! 鬼畜! 悪魔めっ!」
「クックック。何を言ってるんだ? 何を今更。僕は魔族なんだよ。君たちは家畜を殺す時に同情を抱いたりするのかい? しないだろ? 僕だって同じだよ。それくらい僕にとっては君たちの命なんてどうでもいい価値しかないんだよ」
「い、いやっ! お父様!」
ルシファーはその狂気をまずは娘であるフィオナ姫に向けようとしていた。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
フィオナ姫は甲高い悲鳴をあげてきた。悲鳴は王城中に響き渡るかと思うほどであった。
次の瞬間のことであった。
矢がルシファーの足元に突き刺さる。
「ん? ……なんだ。だれだ? 僕のお楽しみの邪魔をするのは」
「何とか間に合ったみたいだな」
少年がいた。少女がいた。それにさっきの弓を放ったのはエルフの少女だ。見覚えがある。
「そうか……お前がトールか。僕の邪魔をしにきたトール。あのラカム達に僕が力を授けたのに、どうやら始末しきれなかったようだな。情けない連中だよ。せっかく僕が力を授けてやったっていうのに」
ルシファーは嘆く。
「もういい。こうなったら僕が君たちに直接引導を渡してやる」
ルシファーはトール達に向き直る。
こうしてルシファーとトール達との戦いが始まったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます