フィオナ王女と国王のところへ向かう

「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!」


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ!」


 アレクサンドリアの王城は阿鼻叫喚の様子だった。幾多もの魔物が押し寄せてきており、使用人達を襲っているのである。


「く、くそっ! このっ!」


 王城には兵士達もいた。


「ガウッ!」


「う、うわっ!」


 しかし、魔物や魔獣の数の多さに圧倒され、手も足も出ていない様子だった。


「ひ、ひいっ! だ、誰か! 誰か! 助けてくれーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 魔獣に襲われている兵士が悲鳴をあげる。


「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 剣聖の職業を自己貸与(セルフレンド)している俺は魔獣を斬り伏せる。


 キャウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!


犬のような魔獣はけたたましい悲鳴をあげて果てた。


「あ、ありがとうございます!」


「く、くそっ! 数が多すぎて時間がかかる」


 倒すのが簡単でも、いちいち時間がかかってしまう。広範囲の魔法を使うわけにもいかない。王城にはまだ多くの人間がいるのだ。悪戯に犠牲を増やすだけだ。


 セフィリスも矢を放って敵を撃退する。


「トールさん!」


「トール! どうするのよ! このままじゃ、国王陛下やフィオナ王女が!」


 エミリアが心配そうに声を張り上げる。


「そうだな……ちっ」


 歯がゆかった。数が多いというだけでそれなりに厄介なものだった。


 ――と、その時だった。


「食らえ! 村人アタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアク!」


「キャン!」


「な、なんだと!」


 ラカムが現れた。どういうことだ。ラカムだけではない。


「ていっ!」


「くらえっ! 農民ストラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアシュ!」


「てやあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ルードが鍬で魔獣を攻撃し、グランが目つぶし用の消耗アイテムで何とか魔獣の注意を削いでいる。


どういうことなんだ。こいつらは俺をただのお荷物、荷物持ち(ポーター)としてやっかみ、パーティーを追い出したんじゃないのか。


 俺はあまりに信じられないその光景に思わず目を疑った。


「ラカム! メアリー! ルード! グラン! どうして、どうして俺を! 俺たちを助けた!」


「へっ! パーティーの最後にちょっとくらい世の中の役に立ちたいと思ったんだよ! 元勇者としてはよ……まあ、今はただの村人だけどよ」


「そういうことよ! だって私達、腐っても元勇者パーティーなんだもの!」


「最後の大仕事ってわけだ」


「そうです! 世のため人のため! 僕たちだって少しは役に立てるところを見せてあげますよ!」


「お前ら……」


 俺はとても目の前で起こっている光景を信じられなかった。


「いいからいけっ! トール! ここは俺たちに任せろ! 時間稼ぎくらい俺たちだってできるぜっ!」


「ラカム……」


「行けよ。トール。この状況で国王様やフィオナ姫を救えるのはお前だけだ。そして魔王軍四天王のあいつ……ルシファーを倒せるのもな」


「エミリア、こいつらにバフ魔法をかけてやってくれ」


「わかったわ! トール! オールステータスバフ!」


「こ……これは」


 ラカム達がエミリアのバフ魔法によりステータスが向上された。


「へっ。恩に着るぜ。トール! エミリア王女」


「時間稼ぎを頼んだぞラカム達。俺達は国王陛下とフィオナ姫のところへ向かう」


「おう! 任せておけ! 村人アタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアク!」


 ラカムは魔獣に斬りかかった。


「行くぞ! エミリア! セフィリス!」


「うん!」「はい!」


 俺達は魔獣をラカム達に任せ、国王陛下とフィオナ姫のところへ急いだ。


 ラカム達の口ぶり。間違いない。これから先に待ち構えているのは四天王の一角ルシファーだ。


 まぎれもない強敵を相手にすることになる。俺達の間に緊張が走った。


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