【ラカムSIDE】これからどうするかを話し合う

ラカム達は暑いので火山地帯から移動して、王国アレクサンドリアに来ていた。そして近くの喫茶店で涼みだした。


「はぁ……はぁ、疲れた、暑かったしよ」


「ほんとよねー」


 ラカム達は冷たいジュースを飲み始める。生き返った、そんな気分であった。


「で……これからどうするよ?」


 ラカムは切り出す。


「どうするって?」


「俺たちのパーティーだよ。この王国から俺たちのパーティーは始まったんだ。魔王を倒すために。だけどよ。これから一体どうすればいいんだよ」


 ラカム達は悩んでいた。これはパーティー解散の危機であった。


「正直に言えば、もうパーティーを続けていくのは難しいわよ。だって、私達は本当の勇者パーティーじゃないんだから。トールももうパーティーに帰ってくることはないんだし」


「そうか……だよな」


「僕も同じ意見です。これ以上、僕たちが勇者パーティーとして旅を続けていくのは困難です」


「ああ……俺もだ。もう将来のことは決めてある。農地を買って畑を耕すんだ。鍬を振るって汗水たらす生き方も地味だが悪くないかもしれん」


グランもルードも達観していた。ラカムも最初は反発していたが、段々とそのエネルギーを失ってきた。


彼らは子供であった。自分たちの身の丈を理解できていない子供。だが、痛い目を見て現実を受け入れるようになってきた。


彼らは大人になってきたのだ。


「そうだな。俺たちのパーティーも終わりだな。解散だ」


「うん。そうしよう」


「そうだ……寂しいが仕方ない」


「そうですね。脇役の人生も悪くないかもしれません。僕たちみたいな脇役がいるから、主役が輝くんですよ」


 彼らにもう、勇者パーティーとして旅立った時の輝きは存在していない。


「その通りだ……俺もこれから村人であることを受け入れ、村人として生きるぜ」


「うん。そうしましょう」


 ラカム達は喫茶店を出た。


 ◇


「それじゃあ、これからは自分たちの人生を生きようぜ」


「そうね。寂しいけど、これでお別れね」


「そうだな……お別れだ。みんな、達者でな。たまには俺の耕した畑に来てくれよ。新鮮な野菜を食わせてやるからな」


「たまには皆で顔を会わせましょう。それで昔話でもしましょう。たまにみんなの顔を見ると、僕も元気になれる気がするんです」


「じゃあな、勇者ラカムのパーティーはこれにて解散だ」


「ええ……」


「だな」


「そうですね」


 四人は寂し気に佇む。だが、いつまでもこうしてはいられない。前を向かなければならない。明日に向かって歩まなければない。そして今、一歩踏み出す時であった。


 彼らの旅は王国グリザイアの王城から始まった、そして、今王国アレクサンドリアの王城の近くで終わろうとしている。


 ――その時だった。


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 悲鳴が聞こえてきた。王城のほうからだ。


「な、なんだ! この悲鳴は!」


「……な、なんなのよ!」


 王城から悲鳴が聞こえてくる。あれは聞いたことがある声だった。フィオナ姫の声によく似ていた。恐らくは姫の悲鳴だろう。


「な、何かあったのかしら!」


「メアリー、ルード、グラン。最後にひとつだけ提案があるんだ」


「提案?」


「最後に一回だけ、勇者ラカムのパーティーとして、良いところを見せないか?」


「そうね……今の私達でも少しは何かの役に立てるかも」


「そうですね。最後くらい、勇者パーティーとして、かっこいいところを」


「少しくらい、良いところを見せて終わったほうがいいかもな。有終の美ってやつか」


「いこうぜ! みんな!」


「「「うん!」」」


 ラカムは声をかける。その時のラカムはどことなく本物の勇者のようにも見えた。


 こうして勇者ラカムのパーティーは王城へと向かったのである。


 これが勇者ラカムのパーティーの最後の活躍の姿であった。

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