冒険者ギルドでラカム達の新たな噂を聞く

 装備を新調した俺達は冒険者ギルドに戻った。


「すげーーーーーーーーーーーーーーーー! マジかよ!」


「あのラカム達がSランクの危険モンスターであるベヒーモスを倒したっていうのかよ!」


「今までの不調はどこにいったんだ!」


「勇者ラカムのパーティー、完全復活だな!」


 冒険者ギルドはわいていた。


「完全復活した勇者ラカムのパーティー対するは新参のトール率いるパーティー。こいつは見ものだよな。どっちが手柄を多くあげれるのか!」


 冒険者達の雑談が耳に入ってくる。


「どういう事? トール? ラカム達はトールが職業を返して貰ったから、弱くなったんだよね?」


 エミリアが聞いてくる。


「ああ。その通りだ」


「あの時の四人方ですか?」


 セフィリスが聞いてくる。あいつ等が泣きついてきた時、セフィリスも既にパーティーに加わっていたのだ。


「ああ。あいつ等がラカムのパーティーだ」


 ラカム。自分を勇者だと思っている村人だ。


「おかしい。あいつは勇者なんかじゃない。村人だ。他の三人だって」


「そうよね。トールが職業を貸してたから強かったってだけで、本来のあいつ等はよわっちいはずなのに」


 俺もエミリアも不思議でしょうがなかった。


「どういう事なの? トール」


「俺もわからない。ただ何かがあったのだけは間違いない。あいつ等が本来の調子を取り戻したなんてことはない。あいつ等は本来あんな調子だ。だからありうるとしたら、そうだな。俺以外の誰かから、力を授かった、これしかないだろう」


「授かった? 誰から」


「それは俺もわからない。ただ、何となく嫌な予感がするんだ。まあいい、ラカムの達の問題は気になる。気にはなるが、良からぬ者から力を授かったとは断言できないし、まだ不祥事を起こしたわけでもない。ベヒーモスは危険な存在だ。討伐すべきモンスターだ。実害が出ているわけじゃないんだ」


「そうね。その通りね」


 釈然としない俺達ではあったが、まだラカム達をどうこうしようとは思わなかった。


「いらっしゃいませ。アレクサンドリアの冒険者ギルドへようこそ。トールさんじゃないですか! 聞きました? トールさん!」


「ラカム達の事ですか?」


「そうなんです! ここのところ不調だった勇者ラカムのパーティーが調子を取り戻したそうなんですよ! これはトールさんのパーティーのいいライバルになりますね! 二つのパーティーで切磋琢磨してお互いを高めあってくださいね!」


 ライバルか……。とてもそんな関係になるとは思えない。何となく不吉な気配を感じていた。


「ええ……わかりました」


「それでトールさん、どうなされるんですか?」


「Sランクへの昇格クエストを受注したいです」


「Sランクへの昇格クエスト……これですね。火山地帯アウレア火山に生息する炎の精霊王イフリートの討伐クエストです。こちらになさいますか?」


「そのクエストでお願いします」


「はい! ではこちらのクエストを受注するという事で進めさせていただきますね!」


 こうして俺達はSランクへの昇格クエストをこなす為、火山地帯へと向かった。


 しかし俺達はそこで連中との再会を果たすこととなる。調子を取り戻した、と噂される勇者ラカムのパーティーとだ。


 ただ俺は、俺達だけはラカムが勇者などではなくただの村人であることを知っていた。


 だからおかしいのだ。奴らに取り戻す調子などない事を知っているから。違和感しか感じなかった。

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