【ラカムSIDE】ルシファーから得た力で無双する

目の前にいたのはSランクの危険モンスターとして知られるベヒーモスであった。


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


ベヒーモスは唸り声をあげる。地響きがした。その凄まじい威圧感はSランクの冒険者パーティーと言えども圧倒されてしまう程だ。決して侮ってかかる事はできない強敵である。


「へっ……雑魚モンスターが。大勇者であるラカム様の目の前で、キャンキャンと吠えるんじゃねぇよ。くっくっく」


 しかし、ラカムは余裕の笑みを浮かべる。かつてのような、笑みではない。心底から自分の実力に自信を持った、そんな余裕のある笑みであった。


「全くだ。俺の聖剣でベヒーモスなど、一刀両断してやる。聖騎士である、俺の実力からすれば、奴など子犬も同然だ」


 ルードは自信満々で言い放つ。


「ぷふふっ! あんなベヒーモスなんてー、私の大魔法でイチコロなのよねー。ぷっふっふ!」


 メアリーも余裕の笑みを浮かべる。


「皆さん! 気を付けてください! 皆さんの実力ならかすり傷ひとつ負わないでしょうが、もしなにかあったてもすぐに僕の回復魔法で回復させてあげますから! 心配は無用ですよ! くっくっく!」


 グランも余裕の笑みを浮かべる。


「さあ! いくぜ! 野郎ども!」


「「「おお!」」」「はーい!」


 ラカム達はベヒーモスに立ち向かった。


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 ベヒーモスは強烈な拳を地面にたたきつける。地面に大きなクレーターができた。


「へっ! 遅すぎるぜ!」


 ラカム達は余裕でその攻撃を避けた。


「へっ! 食らいやがれ! 真勇者アタアアアアアアアアアアアアアアアアアク!」


 以前、村人であるラカムが放っていた攻撃とは異なる。本物の勇者だと言われても納得できるだけの、強烈な一撃をラカムは放った。


 ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


 ベヒーモスはその右腕をラカムに斬られた。ベヒーモスの右腕が地面に転がる。


「ふっ! 流石やるな! 勇者ラカムだけある」


「へっ! 違うぜ! ルード! 俺様は大勇者ラカム様だ!」


「俺も負けていられないなっ! 食らえ! 聖騎士としての聖なる一撃を! ホーリーストラッシュ!」


 ルードは聖剣エクスカリバーによる強烈な一撃を放つ。光のような一撃が走る。


 ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


 ベヒーモスの左腕が切断された。


「ふふっ! 見せてあげるんだからっ! 大魔法使いメアリーの大魔法を。ベヒーモスなんて、私の大魔法で一撃なんだから! ぷっふっふっ!」


 メアリーはかつて大魔法使いとして慣らしていた時以上の、強烈な魔法を発動させる。


「くらいなさい! ベヒーモス! 私の大魔法を!」


 メアリーの全身から溢れんばかりの魔力が迸る。


「フロストノヴァ!」


 絶対零度の一撃がベヒーモスを襲う。


 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


 断末魔のような悲鳴をベヒーモスはあげた。ベヒーモスは一瞬にして氷漬けになる。


「全く、皆さんが強すぎて、僕の出番が何もなかったですよ」


 大僧侶であるグランはため息を吐いた。


「言うなっての……皆怪我なくて無事で何よりじゃねぇか」


「それも確かですね」


 四人は笑みを浮かべる。ラカム達はかつての力を取り戻した。いや、かつて以上の力を取り戻したのである。


「順調そうだね……何よりだ」


 四人の前に魔王軍四天王の一角。ルシファーが姿を現す。


「これはルシファー様。ありがとうございます! ルシファー様の授けてくれた力で俺達はかつての力、いえ! かつて以上の力を手に入れる事ができました!」


「そうか……それは何よりだ。ところで君たちにお願いがあるんだ」


「お願いですか?」


「危険な力を持った少年がいる。あの邪神を倒した少年。きっとあいつは魔王様の大きな障害となる事だろう。君たちの力であの少年を倒して欲しいんだ。君たちもよく知っているだろう? なにせ一時期は一緒にパーティーとして行動をしていたんだから」


「トールの事ですか?」


「そうそう。あのトールっていう、ジョブ・レンダーだ。あいつさえ処分できれば、他の二人は腰巾着みたいなものだ。能力をお下がりしてもらっているに過ぎない。彼がパーティーの頭なんだよ。頭をかち割ってやれば、それ以上は何もできないだろ? くっくっく」


 ルシファーは笑う。


「ルシファー様にお願いされなくても、あのトールには恨みがあるんですよ! 俺達から職業を取り上げやがって! あいつのせいで俺達がどれだけ苦労したことか! 一発痛いのくれてやらないと、俺達の気が治まらないんですよ!」


 自分達の非など一切認めず、ラカム達はトールに責任を擦り付けていた。


「そうよ! そうよ!」


「そうだ! トールのせいだ!」


「そうですよ! トールが全部悪いんです!」


「そうか、そうか。利害が一致しているようで僕は嬉しいよ。それじゃあ、ラカム達、健闘を祈るよ。僕はどこか遠くでその様子を見させて貰う事にしよう」


 こうしてかつて以上の力を得たラカム達がジョブ・レンダー、トールたちのパーティーに立ちはだかるのであった。


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