エルフ姫を間一髪のところで助ける

俺達は助けたエルフ兵達とエルフの国を目指していた。


「あそこがエルフの国です。普段は視覚を誤魔化す結界を張っているのですが、それが破壊され、普通に見えるようになっています」


「やはり、邪神の仕業ですか」


 俺は聞いた。


「は、はい。その通りです」


 って事はまずい。エルフ国には既に邪神の脅威がすぐそこまで迫っているという事だ。


「急ぐぞ! エミリア!」


「うん! トール!」


 俺とエミリアは先を急いだ。


 その途中、俺達は傷ついているエルフ兵を見つけた。


「エミリア、癒してやってくれ」


「うん。トール。ヒール!」


 エミリアは傷ついているエルフ兵を癒した。


「あ、ありがとうございます!」


「礼はいいです。俺達、急いでるんです。邪神はどこに向かいましたか? 答えてください」


「は、はい! この先を行ったところにあるエルフ城に」


「エルフ城ですか。ありがとうございます! 急ぐぞ! エミリア!」


「うん! トール!」


 俺達はエルフ城を目指した。


 ◇


「ここがエルフ城か」


 俺達はエルフ城に入る。


「きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」


 悲鳴が聞こえてきた。


「エミリア!」


「わかったわ! トール! ホーリーウォール!」


 エミリアは聖女としての防御魔法を使用した。聖なる光の壁がエルフの少女を守る。

 あれはエルフの王女様か。


 キィン!


 甲高い音が鳴り響いた。


 そこにいたのはエルフの王と思しき人物。そして王女。


 さらにはもう一人。褐色の肌をした、ダークエルフのような少女。美しい少女のような見た目をしているが、物凄い殺気を放っている。

 こいつが邪心か。想像していた姿と違うが。


「トール……あれが邪神?」


「みたいだな」


「私もっと、モンスターみたいなのを想像してたわ。うじゃうじゃとしたような」


「そうだな。俺もだ」


「貴様達、人間か。余の道楽を邪魔するとは何事か」


「当然だろ。流石に見捨てる事なんてできない」


「調子に乗るなっ! 小僧っ!」


 邪神が俺に襲い掛かってきた。手刀。だが魔力を帯びている。そこら辺の聖剣や魔剣程度の切れ味はある事だろう。


「自己貸与(セルフレンド)剣聖」


 俺は近接戦闘用に自信に剣聖の職業を自己貸与する。


 キィン!!


 俺の剣と邪神の手刀が激しくぶつかり合う。


「ほう……貴様、相当な力を持っているな。以前自分を勇者だとか謡っていた蠅とは随分と違うではないか」


「勇者だと謡っていた蠅?」


 エミリアは首を傾げる。


「いや、もういい。俺は想像がついた。多分、あいつらだ」


 ラカム達。何をやっているんだ。暴走しすぎだろう。空回りもいきすぎている。何がどうやって邪神を目覚めさせる結果になったんだ。

 

 理解に苦しむ。


「面白い。気に入ったぞ……だが、今日のところは引いてやる。余も万全の状態で迎えうってやろう」


 邪神は突如消えた。転移魔法(テレポーターション)だ。


「なっ!? 消えたの!?」


「それより、大丈夫ですか」


 俺は襲われていたエルフの王女を介抱する。


「あ、ありがとうございます! あなた様は命の恩人です!」


 するとエルフの王女が涙を流しながら俺に抱き着いてきた。


「なっ!?」


「トール! にやにやしないでよ! もうっ!」


 エミリアは顔を真っ赤にして怒鳴った。


「う、うるさい! にやにやしてなんかない!」


「う、嘘! 女の子に抱き着かれて嬉しそうな顔して!」


「い、今はそんなどころではないだろうが!」


 こうして、邪神の危機は一旦ではあるが去ったのである。

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