【ラカムSIDE】国王から邪神を復活させた嫌疑を糾弾される

「貴様たちに聞きたい話がある」


「な、なんでしょうか……国王陛下」


 ラカム達。勇者(だと自分で思っている)パーティーはアレクサンドリア国王に呼び出されていた。


「エルフ国近くの神殿に封印されている邪神が目を覚ましたそうだ」


「は、はい。どうやらそのようですね。いやー……色々世の中大変ですよね。本当もう。嫌になっちゃいますよね。ははっ」


 ラカムは苦笑いをした。


「近隣の住民から連絡が来ている。どうやら神殿に忍び込んだ愚かな人間が四人程いたそうだ。それでその四人の姿がお前達によく似てると」


「いやーーーーーーーー!! いやになっちゃいますよねっ! 国王陛下!! 他人のそら似ですよ! そら似! もしくは俺達を陥れたい奴らが、俺達に見せかけた変化の魔法で変身してんたですよ! そうに決まってます!」


「……本当か? 正直に申してみろ。貴様たちは神殿には入っていないのだな」


「は、入ってるわけないじゃないですか! ましてやそんな邪神を復活させるなんて愚かな真似! 僕達は絶対にしてません!」


「聖騎士たる俺は常に正々堂々と、聖騎士として振舞うべく生きてきました! ですからそんな非道な行いなど絶対にしません!」


「わ、私達はやってないわ! 国王陛下! きっと私達を脅威に思った魔王軍の仕業よ!」


「……だよな。俺達はやってませんっ! 絶対にっ!」


 バレたらひどい事になるとわかっているラカム達は必死に誤魔化し、その場をやり過ごそうとする。


「そうか。貴族クレアドルからの調べはついているのだぞ。クレアドルはお前達に神殿にあるアイテムを取ってきて欲しいと任命したそうだ」


 国王はそう告げる。やはりある程度の確信があるからこうして勇者(だと自分では思ってる)パーティーは呼び出されたのだ。


「な、なんですと! お、俺達はそんな事してません! 絶対に!」


「き、きっと私達を妬ましく思ったその貴族が嘘を言っているのよ!」


「本当か? ……連れて参れ」


「はっ!」


 兵士が男を連れてくる。


「ひ、ひいっ! は、離せっ! 離せぇ!」


 拘束されたクレアドルが兵士に連れてこられる。


「あ、あなたはクレアドルさん!」


「勇者ラカムよ。なぜこの男がクレアドルだとわかる?」


「馬鹿」


 メアリーはいさめる。


「や、やべ。い、いえ! 偶然道ですれ違ったことがあるんですよ! それで挨拶をしたんです!」


 見苦しい嘘を告げる。


「挨拶をした程度の通行人にわざわざ名を名乗るか? 馬鹿にするのも大概にしろ。クレアドルはマジックアイテム『真実の首輪』をつけさせ、全てを白状したわ。お前達に神殿への侵入を依頼したとな」


 マジックアイテム『真実の首輪』要するに本当の事しか話せなくなる首輪である。


「くっ! それはっ! 嘘だっ! 俺達はそんな事していない!」


「そうか。では、それをこれから証明してもらおうか! 真実の首輪をこやつらにつけさせろっ!」


「「「はっ!」」」


 周囲にいる兵士たちが答える。


「うっ……ううっ」


 マジックアイテム『真実の首輪』をつけられたらもう終わりだ。どうしようもない。ラカムは観念した。


「す、すみませんっ! 俺達がやりましたっ!」


 ラカムは国王に土下座した。


「……そうか。やっと白状したか? なぜそんな事をした」


「それは、金が欲しかったのと、俺達勇者パーティーの実力を発揮したかったんですっ!」


「神殿には強力なモンスターがいると聞きました。だから、そのモンスター達を俺の聖剣でバタバタと薙ぎ払う予定だったんですっ!」


「わ、私の大魔法でそのモンスターをイチコロにする予定だったんだけど……」


「そ、そうなんです……。僕も回復で支援しようと」


「なぜか最近調子が悪い俺達は、きっとそのクエストをクリアすれば力に目覚めると思ったんです! 真実の力に! なぜなら俺達は勇者パーティーだからです」


「もうよい。貴様たちには失望した。一時期は本物の勇者達だと思っていた時もあったが、今はただの道化としか思えん」


 国王は告げる。その目にもう覇気はない。ゴミを見るような目だった。


「そ、そんな! 俺達勇者パーティーを見限るつもりですかっ! 国王陛下!」


「見限るもなにも、既に見限っておる。だが、貴様達を糾弾しても仕方がない。既に邪神は目覚めてしまっているのだからな。それに貴様達も邪神を目覚めさせた事は故意に行った事ではないようだ」


「そ、そうです! 国王陛下! あれは不幸な事故だったんですよ! 邪神と対峙した俺は真の勇者パワーが目覚めるはずだったんですけど、なぜか目覚めなくて。おかしいな? あそこなら普通、俺の勇者としての力が目覚めて、あの邪神を一撃で倒す展開だったのになー」


「そ、その通りです! なぜか……俺の聖剣の力も戻らず。俺達はただ蛇に睨まれた蛙のように邪神を見ているだけでした」


 ルードも力なく答えた。


「貴様達の今までの功績に免じて、禁固刑や極刑のような罰を課すのはやめよう」


「ふう~」


 ラカムは胸を撫でおろす。そして気づいた。


「って、事は何かしらの罰は下されるんですか?」


「当然だ。貴様達は過失ではあれど重大な罪を犯した! よって制裁金金貨1000枚を要求する!」


「「「「金貨1000枚!」」」」


 ラカム達は声を出して驚いた。


「そ、そんな大金払えるわけないじゃないですかっ! 国王陛下っ!」


「聞いておるぞ。貴様達は破竹の勢いでモンスターを倒していた時、かなりの金額を荒稼ぎしていたとな。それで一人一人が豪邸を購入したそうじゃないか。魔王の討伐が住んだらそこで暮らすように」


「くっ! なぜそれをっ!」


「我々の調査能力を甘く見るでない。それを売却すれば足りるであろう。急いで売るとなると、それなりに足元は見られるだろうが、四軒全て売れば金貨1000枚程度にはなるであろう」


「ぐっ!! ううっ~!! そ、そんな、こんな事になるなんて!」


 ラカム達は力なくうなだれた。


 こうしてラカム達が無双していた、魔王討伐後の優雅なセカンドライフ。それを送るべく購入していた不動産物件は競売に掛けられ、売却される事となった。


 ラカム達はこうして貴重な財産を失ったのである。そして王国からの信頼を失い、大幅な被害を受けているエルフ国を敵に回す事となった。



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