魔物と交戦しているエルフ兵を助ける
「っと……ここがエルフの国ら辺だ」
エルフの国は通常、場所が見えないようになっているらしい。恐らくは結界だろう。結界で死角をごまかしているのだ。
エルフは長命であり、そして高い魔力を持っている。そういう魔法による細工はお手の物だ。聞いた話によると1000年前に邪神を神殿に封印したのもエルフの力によるものらしい。
「トール、あれ見て!」
「ん?」
エミリアは指を指した。何やら騒々しい音がする。そして、多くの人々が小競り合いをしているようにも見えた。
「降りろ、グリフォン!」
キュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
けたたましい鳴き声をしてグリフォンはその場へと降り立って行った。
◇
「く、くそっ! こいつめっ!」
キィン!
甲高い音がする。
「エルフ魔法兵団! 炎(フレイム)の魔法を放て」
「「「フレイムボルト!」」」
複数のエルフ魔道兵による炎魔法が対象に襲い掛かる。通常のモンスターであれば十分倒しきれる程の威力だ。
――だが。
邪神を封印していた神殿にあった魔物達は数が多いにも関わらず、かなりの強さを秘めていた。
紅蓮の炎をその身に受けても魔物達は怯みすらしない。
「なっ!? 馬鹿なっ!!」
キエエエエ!!!
奇声をあげ、魔物は襲い掛かる。
「うわああああああああああああああああああああ!!」
エルフ兵は悲鳴をあげた。魔物の突撃を受け、エルフ兵が宙に舞う。
「くっ! なんという事だ! 我がエルフ兵団を持ってしても押し返す事もできない! やすやすと防衛網を突破されてしまう!」
エルフ兵。その兵団長と思しき人物がそう言っていた。
「だ、誰だ!? 人間か?」
俺達に対して、その兵団長が言ってくる。
「俺達は王国アレクサンドリアの冒険者ギルドから来ました」
「な、なんだと!! 冒険者ギルドからかっ! それは助かる、そういえば国王陛下が援軍を陳情していたそうだな」
「ええ、俺達がその援軍です」
「おおっ! 頼りにしてるぞ! し、しかし二人だけで大丈夫なのか!?」
「心配しないで! トールはすっごい強いんだから! おじさんっ!」
「あなたはエルフ兵の団長ですか?」
「うむ。そうだ」
「戦況はいかがですか?」
「見ての通り芳しくない。神殿から生れ出た魔物は数が多いくせに、個体として恐ろしく強いのだ」
HP(体力)も攻撃力も相当に高そうだった。エルフ兵団の鎧や盾があっさり打ち破られ、そしてエルフ兵の攻撃を受けてもビクともしない。
「エミリア。エルフ兵のステータスをあげてやれ」
「わかったわ! トール! 全体強化(オールバフ)!」
エミリアは聖女としての魔法を発動する。全体強化(オールバフ)。聖女となったエミリアはパーティー単位どころが、レギオン(軍)単位でステータスを強化する事になる。
魔法の光がエルフ兵を包み込む。
「なっ!! なんだこの光は!」
「力がみなぎってくるぞっ!」
「こっ、これなら闘える! 闘えるぞっ!」
「やるぜっ! 野郎ども!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」
エルフ兵たちは失いかけてきた戦意を取り戻した。
「な、なんという事だっ! あ、あなたは聖女様なのですか!?」
エルフ兵団長は驚いていた。
「えへへっ。はい! その通りですっ!」
「何を偉そうな事言ってやがる。俺が貸した職業(ジョブ)だろうが」
「ありがとう! トール! お礼にちゅーしてあげるっ!」
「それはいらない」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! なんでそういう事いうのよーーーーーーーー!!」
「それより埒があかないな」
俺は自己貸与(セルフレンド)する、職業を決める。そうだな、あれがいいか。群単位だったら。
「自己貸与。大賢者」
俺は自身に、大賢者の職業を貸与する。別に大魔法使いでもよかったが、メアリーに貸与した職業(ジョブ)は俺の中で印象が悪かった。何となく連中に貸した職業(ジョブ)は自分に貸したくない。
俺は魔法を発動する。発動するのは聖属性の全体攻撃魔法だ。
「ホーリーバースト!」
無数の激しい光が、魔物達に襲い掛かる。
「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」」」
魔物達が断末魔をあげ、果てていく。
「な、なんという威力だ! あれだけの魔物達が一瞬で」
「職業返済(ジョブリターン)」
一撃食らわせた俺はすぐに元のジョブレンダーに戻る。一撃というには大きすぎる一撃ではあったが。
あれだけいた魔物達が半減以下になっている。
「後はエルフ兵で何とかなると思います。エミリア、適宜皆を回復させてくれ」
「わかったわ! トール!」
こうして、エルフ兵団は魔物達の撃退に成功したのである。
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