エルフの国へ向かう
俺とエミリアのパーティーはエルフの国へ向かう。それなりの遠出だ。王国アレクサンドリアから歩いて数日かかる程だ。
「ねぇねぇ、トール」
「なんだ?」
「エルフの国までどれくらいかかるの?」
「ざっと数日だ」
「ええーーーーーーーーーーーー! そんなにかかるのっ! 疲れちゃうじゃないの!」
やはり王女様に冒険者の生活は過酷過ぎたか。
「わがままを言うなの言いたいところだけど、確かにその通りだ。疲れるな。無駄な体力は使いたくない確かに、徒歩だとあまりに時間がかかりすぎるな」。
「そうよ! そうよ! 歩いていくなんて大変よ!」
「そうだな。都合の良いモンスターはいないものか」
俺は探す。その時であった。天空にグリフォンがいたのだ。
「……おっ。いたいた。あいつ便利そうだな」
やはり地上を歩く生き物よりは空を飛んだ方が早そうだ。
「よっと!」
俺は石を投げつけた。グリフォンに当たる。当然のようにそれで死ぬわけではない。だが、グリフォンは怒ったようだ。俺達を敵だと認識した。
クガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
グリフォンが滑空してくる。
「自己貸与(セルフレンド)」
俺は自分に『ハンター』の職業を貸与する。ハンターだ。俺は弓を構える。襲い掛かってくるところをねらい打った。睡眠薬が塗られた矢がグリフォンに襲い掛かる。
バサッ。グリフォンは地面に落ちた。
「即効性の睡眠薬だ。一瞬で眠くなる」
俺達はグリフォンに近づく。
すー、すー、すー。規則正しい寝息を立てて、グリフォンは眠っていた。
「よし」
「どうするの!? トール、このグリフォンを! 食べるの!? じゅーじゅーと火で炙って!! おいしそうねっ!」
「馬鹿かっ! 食べてどうするんだっ! 睡眠矢を使った意味を考えろ。生け捕りにしたかったんだよ」
「生け捕り? 踊り食いって事?」
「そんなわけあるか。いいから見てろ。職業返済(ジョブ・リターン)」
俺は職業を返済し、元のジョブ・レンダーに戻る。
そして俺は『ビーストテイマー』の職業を自己貸与(セルフレンド)する。
「テイム」
俺はグリフォンをテイムした。グリフォンは俺の使い魔となったのだ。要するになんでもいう事を聞く便利なペットになった。
「起きろ、グリフォン」
くわっ! 妙な奇声をあげてグリフォンは目を覚ます。
「乗るぞ、エミリア」
グリフォンは大人二人乗るくらいなら問題ない。それなりに大きいサイズをしていた。
「うんっ!」
エミリアは俺に抱き着いてきた。
「いけっ! グリフォンっ!」
クワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
奇声をあげてグリフォンは空へ旅立った。
「トール……怖いわ」
柔らかいものが俺の背中に当たってくる。エミリアは必死に俺にしがみついてきた。
「どうしたの? トール、顔を真っ赤にしちゃって」
「なんでもない」
背中に柔らかいものが当たってくる。俺は意識をグリフォンの操縦に向ける。
「グリフォン、もっと速度をあげろっ!」
クアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
グリフォンは速度をさらにあげ、エルフの国を目指す。
エミリアは嘆いた。渋々エミリアも景色を見下ろす。
「それにしても、本当……良い景色」
俺達はエルフの国にたどり着くまでの間、束の間の事ではあるが。
天空からの景色を楽しんでいた。
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