第2話 記憶の思い出に

ナイトメアを全滅させた俺は捕虜がいる牢屋に近づいた。中には30人近くの女性達がいた。

その中の1人が異様に目立っていた。綺麗な白いドレスに綺麗な顔立ち、雰囲気も明らかに他の人とは違う。

(もしかしてXが言ってたヴィクトリア王国の姫ってコイツか?)

まさか本当に捕まっているとは、何で王国の姫が捕らわれているんだ?

「あなたはいったい…」

姫が声を震わして俺に言う。まあ、いきなり敵を全滅さた奴がいきなり近づいてきたら怖いか。

「…離れてろ」

俺は牢屋のドアを開けて(壊すとも言う)捕虜を全員外に出した。

「…みんな着いてこい、近くのギルドまで案内してやる」

俺は捕虜のみんなにそう伝え移動する。どうやらちゃんと着いてきてるみたいだ。

しばらく歩いているとドレスの女性が話してきた。

「あの!私達を助けていただき本当にありがとうございます。私ヴィクトリア王国の姫のダーナと申します。」

歩きながら姫様が俺にお礼を言った。

「別に大した事はしていない。ナイトメアがいたから殺しただけだ。ただ、何で姫様がナイトメアに捕まっていたんだ?」

俺は姫様に事情を聞いた。どうやら祖父の墓参りに行っていたらしい。いつもは騎士団長と護衛を連れて行くらしいが、最近騎士団長が休まないので姫様が休ませたらしい。騎士団長は何度も何度も抗議したが、姫様があまりにも頑固のため渋々言う通りにしたらしい。何も起こらないから大丈夫だろうと思っていたらしいが、ナイトメアの奇襲にあい現在に至ると。…はあ、危機感がないなこの姫は。

「事情はわかった。これに懲りたらちゃんと騎士団長の言う通りにしとけ。一歩間違えたら死んでたぞ。」

姫様に注意をする。立場はあれだが流石にな。

「はい、騎士団長にも頭を下げておきます。…あのお名前を伺ってもよろしいですか?」

「……見えてきたぞ。」

俺はギルド本部を指を指す。

こうして捕虜の全員ギルド本部に連れてきた。

流石に深夜だから対応は明日になるか。

俺はギルドの受付嬢に事情を説明して後は対応をお願いした。姫様は何か言いたげな表情をしていたが、気にせずにギルドを後にした。


〜アリサ視点〜


朝になって目を覚ます。きっちりと時間通りに起きて身体を起こそうとするが、胸あたりに違和感を感じた。見てみると

「zzz…うにゅう♡(すりすり)」

ミクニが私の胸を枕にして寝ていた。またベットに潜り込んで寝てたのね。

「…よしよし」

私が頭を撫でてあげるとミクニが「うにゅ♡お姉ちゃん…大好き♡」と寝言を言っていた。天使ね。

起こすのは躊躇うのでミクニを抱っこして下に降りる。リビングに着いたらミレ姉さんが朝ごはんを作っていた。

「アリサちゃんおはよう。あら?またミクニちゃんが忍びこんでたの?」

「おはようございますミレ姉さん。いつものことです。」

いつものように挨拶するとリビングのドアがガチャと開いた。

「おはようございます。ミレイユ姉さん。あ、お姉ちゃんもおはよう。」

トウコが入ってきた。そして私に抱っこされているミクニを見て慣れたように起こす。

「ミクニちゃん朝だよ。もうすぐごはんだよ。起きて。」

頭を撫でながら、トウコはミクニを起こす。

「うにゅう、みんなおあよー」

目を擦りながらミクニが起きた。天使ね。

「ミクニちゃんおはよう。ごはんもうできたから顔洗ってきなさい。」

ミレ姉さんがミクニに言うと「あーい」といって洗面台に行った。

ミクニが顔を洗って戻ってくると4人で朝ごはんを食べる。

「あれ?他のみんなは今日いないの?」

ミクニがそう尋ねる。

私達孤児院のみんなはこの大きい家で全員住んでいる。部屋もまだ余ってるくらい広い家だ。あの孤児院を脱出した後、おばあちゃんと一緒に騎士団に行ってヴィクトリア王国の王様とあい、事情を説明した。それに王様は「儂が使わなくなった別荘がある。そこに住みなさい。」とのことだった。

あまりにも優しい王様だった。

なんでもおばあちゃんは昔、ここの王国の王様のメイドをやっていたらしい。全然知らなかった。王様は本当に優しくて本当に真っ直ぐな男らしい。

こんな王様もいるんだ。おかけで孤児院みんなが安全に暮らせている。

「今日は私達以外は別の街に行ってるわね。」

みんなギルドで時間のかかる依頼をやるって言ってたからしばらくは帰ってこないかもね。

「そっかーアリサお姉ちゃんもトウコお姉ちゃんも今日は仕事だもんね。」

ミクニが少し寂しそうにそう言った。

「まあ姫様が急に休ませたからね。今でも心配よ。」

「私も今日は指名依頼があるけど、夕方には戻ってくるよ。」

私達はそれぞれの仕事がある。

私はヴィクトリア王国の騎士団長、トウコはSランク冒険者だ。ミレ姉さんは姫様専属のメイドで、

ミクニも一緒に行っている。まだミクニは12歳で私とトウコは16歳でミレ姉さんは18歳だ。みんな全然若い。特にミクニはまだ幼すぎるので私たちが守ってやらないと。

「じゃあ、そろそろ行くわね」

私が出かけようとすると、急に魔法石の連絡がきた。

連絡を行う場合、専用の魔法石で連絡交換をする。

この魔法石は非常に便利だ。

「私だ、どうした?………何!!!!!」

私は大声をあげた。内容を確認して魔法石をしまう。

「どうしたの?アリサちゃん?」

ミレ姉さんが心配そうにこちらを見つめる。

「姫様がナイトメアに襲われたらしい…」

「「「え!!!!!」」」

3人がびっくりした顔でこちらを見つめる。

「姫様は無事だ。冒険者がナイトメアを返り討ちにしたらしい。私は今から別の街のギルド本部に向かう。ミレ姉さん達は王様に事情を説明してあげて、ミクニも一緒でお願い。」

2人は「わかった」と言って、すぐに準備をする。

「お姉ちゃん…大丈夫?」

トウコが心配した表情で見つめる。

私が「大丈夫よ」と声をかけるが、怒りがこみ上げる。

「だから私は反対だったのだ!たく!!!」

私はすぐに家を出ようとするとミクニが止めた。

「あ、アリサお姉ちゃん待って。ぎゅー!」

ミクニがいきなり抱きついてきた。

「ん〜ミクニの元気アリサお姉ちゃんに注入〜」

私は頬を緩ませながら、ミクニの頭を撫でて

「ありがとう、行ってくるわね。」

一瞬で心が落ち着いた。

よし、姫様の説教をする元気が出たわ。


「だから私は反対だったのです!!!!!聞いてるんですか!姫様!!!」

私は馬車で姫様を連れて王国に帰還していて、姫様にこっぴどく説教をしている。かれこれ1時間くらいか。でも、まだ足りない!

「もう…本当にごめんなさい。アリサ、もう許して〜」

「許すはずないでしょう!!一歩間違えたら生贄にさせられたんですよ。わかってるんですか!!」

まったくこの馬鹿姫様は!!!

「はあ、もういいです。疲れました。まあ姫様が無事でよかったです。」

「うん、本当にごめんなさい。」

どうやら本当に反省してるらしい…。

「帰ってミクニちゃんをもふもふしよ。」

「ミクニは小動物じゃないんですが……」

どうも姫様はミクニがお気に入りなのよね。

「ミクニに変なことしないでくださいよ。」

「大丈夫よ。住所変更を私の部屋にして、いっぱい可愛がるだけよ。」

「めちゃくちゃ大問題です!!!!!」

まったくこの馬鹿姫様は!!!(take2)

「ミクニは私が厳しく躾けています。姫様にはミクニをあげません!」

「…ちなみにどういうことをしてるの?」

「ミクニがごはん食べてる時、口周りが汚れてたら拭いてあげますし、お風呂とか溺れないように一緒に入ったり、好きなお菓子を買ってあげるくらいです。」

「うん、まず躾を辞書で調べよう…。そのまま行くとあれ買ってって駄々こねるんじゃない?」

「え?でもミクニは「お姉ちゃんとお揃いがいい」としか言ってませんが?」

「え?何その天使?もう私に頂戴♡」

「ダメに決まっています!!!!」

まったくこの馬(以下略)。

「ところで、姫様を助けてくれたその冒険者は…」

「実は朝起きたらもう街を出ていたらしくて…」

「そうでしたか、ナイトメアを全滅させるほどの実力だから騎士団に推薦しようとしましたが。それでその冒険者の特徴は?」

是非とも情報がほしい。

「えっと、目を布で隠してて、長いマフラーで口を覆ってて、……格好いい人でした。」

最後は聞こえなかったが結構変わった人なんだな。

「それで、その人の名前は?」

「本人に聞くことが出来なかったけど、ギルドの人によるとアンヤっていう人だって。」

アンヤって言うのか……え?

「姫様…今アンヤと?」

「ええ、そう言いましたけど?」

まさかその名前を再び聞くことになるとは…、だが彼はもうこの世には…。

「あ、でも。」姫様は思い出したように言う。

「彼のネックレスがミクニちゃんと同じだったんですよ。羨ましいなー。」

………なんだと。

「姫様!!!本当に名前がアンヤで!ミクニと同じネックレスをしていたんですか!」

私は慌てて姫様に詰め寄る。だって…だって…

ミクニのネックレスは手作りでお店に売っていない。それが同じネックレスをしている人は1人しかいない。

「え!急にどうしたの?まあアンヤ様で間違いないし、たしかにミクニちゃんと同じネックレスでしたが……」

姫様が間違いないと答える。

「生きて……いるのか……」

私は涙が出てとまらなくなった。

「ちょっと、急にどうしたの?」

「姫様…私達が初めてヴィクトリア王国に来て、孤児院で亡くなった男の子の話を覚えていますか?」

「え?ええ覚えてるわよ。……まさか……」

どうやら姫様も気づいたみたいだ。

(もし生きていたら…どうして私達に会いにこない)

驚き、嬉しさ、悲しさが同時に襲いかかる。

(ミレ姉さん達に知らせないと…)

私は魔法石を取り出して、すぐにミレ姉さんに連絡した。


〜アンヤ視点〜


「しかしよかったんですか?ヴィクトリア王国に行かなくて…ヒッヒッヒ。」

「行く理由がない。それに孤児院のみんなには会わないようにしている。」

俺は町外れでXと待ち合わせをし、現在カフェにいて情報を貰うところだ。

「ヒッヒッヒ、可哀想なお方だね。今回は貴方の言う通りにはいかないだろうね。」

「……どういうことだ?」

今回は俺としては難しい内容なのか?

「どうもこうも、次のナイトメアのターゲットはヴィクトリア王国みたいですよ。しかもまた幹部クラスの」

「……なんだと?」

まさか次の目的地はヴィクトリア王国だと……

「ヒッヒッヒ、情報は間違いないですよ。しかしアンヤ様、いくらナイトメアの幹部クラスを倒したところで数は減ってないですよ。新しい幹部が増えるだけなので…。」

ナイトメアの幹部は強さはあるが変わりはいくらでもいる。数はわからないが何万かもしくは何千万か……。ただ…

「俺はナイトメアがいればその分殺すだけだ。数は関係ない。」

数が増えたところで俺には関係ない。むしろ望むところだ。

「ヒッヒッヒ、相変わらずの戦闘狂ですね。でもどうしますか?ヴィクトリア王国に行かなくていいんですか?」

「……そこにナイトメアが現れるなら、行こう。

孤児院のみんなに会えなかったらラッキーで、会ったら俺の姿を見て諦めて貰うしかない。むしろこの気持ちに終止符を打てるかもな。」

(はてさて、そうはうまくいきますかな。あの孤児院のみなさんは、そう簡単にいかないでしょうな。)

俺は荷物をまとめてヴィクトリア王国に向かった。




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