第1話 孤独のAssassin(アサシン)
「……夢か」
大きな木の上で寝ていたアンヤが目を覚ました。
お腹あたりに違和感を感じて見てみるとリスが丸まって寝ていた。リスも起きてこちらを見る。
優しく頭を撫でてやると気持ちがいいのか目を細めてスリスリしてくる。
やがて満足したのかそのままどっか行ってしまった。
「あれから6年経つのか…」
あの襲撃から6年、アンヤの人生が大きく変わってしまった。あの時の記憶は鮮明に覚えている。
精霊から授かった力でナイトメアに反撃したらナイトメア全員消滅してしまった。塵も残さす…。
(みんなは無事にヴィクトリア王国に着いたんだろうか?)
あれから孤児院のみんなの情報は何も知らない。
みんなに会いたい気持ちはあるが、それは絶対に叶えてはならない。なぜなら…
(完全に俺、人間辞めちまったな…)
ミレ姉に貰った布で目を隠し、アリサ、トウコが編んでくれたマフラーで鼻、口を隠す。
ミレ姉は俺たちの一番の姉さんだ。
よくみんなの世話をしてくれたり、みんなのことを可愛がってくれた。みんなはミレ姉のことが大好きだか、母性力が強すぎて姉さんっていうよりかお母さんって感じなんだよなー。
アリサ・トウコは姉妹でよく俺と遊んでいたな。
アリサはよく木刀振り回して「アンヤもトウコも私が守ってあげる!」とよく言っており、周りが悪いことをすると叱ってくれる。面倒見が良く、正義感が溢れる姉だ。
トウコは逆でアリサと違って大人しい。
よく魔術の本を読んで、「アンヤさん見てみて!」
と俺に魔術をよく披露してくれたっけ。
まあ、たまに失敗して大泣きしてアリサと一緒に慰めるのは苦労した。まあ最後はミレ姉が優しく頭を撫でて寝かせるという流れで終わる。
まあ、それはともかく今の俺の格好は東方で言うと忍者、またはアサシンとも呼べるくらいの格好だ。好きでこんな格好をしていない。
今は人間の姿をしているが力を使おうとすると俺の身体が変化してしまうからだ。
おそらくだが、ただでさえ6属性使えるのもチートなのに身体能力も桁違いに強くなってしまったのだ。
そのせいか力を使おうとすると人間の身体がその力に耐えきれず、身体が自動的に魔族化してしまう。なので戦う時はどうしても襲撃の時の姿になってしまうのだ。それを隠すためにこの格好をしている。
(こんな姿…みんなには見せたくない…絶対怖がる。)
だからヴィクトリア王国に向かわず、孤児院のみんなには一生の別れを自分に告げた。
(まあ、みんなはきっと俺は死んでると思っているだろうしな…6年経ったんだ。もう俺のこと忘れてるだろう。)
チャリン♪
アンヤのネックレスが音が鳴る。
ミクニがプレゼントしてくれたものだ。
ミクニは孤児院のみんなのことが大好きでよくみんなに抱きついてぎゅーってしてくる。
まあいわゆる甘えん坊だ。俺の誕生日にミクニがネックレスを作ってくれて「アンヤ兄とお揃いだよ♡」と言われた。何故か俺に異常に懐いてるんだよな…可愛いからいいけど。
てゆーか孤児院のみんなは俺以外女子っていうのもおかしい…。居心地悪いったらありゃしない。
(そろそろ休憩終わってギルドに戻るか…)
依頼内容が完了した後、昼寝したくなって寝てたらもう日が落ちてきた。そのまま冒険者ギルドに向かう。
「アンヤさん、お疲れ様です。依頼完了の確認をしますので少々お待ちください。」
ギルドの受付嬢が丁寧に挨拶をする。しばらくすると戻ってきた。
「依頼完了の授与されました。こちらが依頼料金です。またお一人で依頼完了させましたね。凄いです!」
まあ、あの姿を見せるのは嫌だしな…。
基本1人の方が都合がいい。
「でもアンヤさん?本当によろしいんですか?Aランクになる機会を逃しても?」
「そもそも俺はランクには興味がない。」
冒険者ギルドのランクはS〜Eランクに分けられる。
俺はBランクだがこのランクがちょうどいい。
S〜Aランクは指名依頼や冒険者の見本になるからあまり目立つことはしたくない。
「うーん、アンヤさんならSランクになれそうなんですけど、勿体無いですね。普通いませんよ?昇格試験を拒否するのって?」
「俺は別にSランクになるために冒険者をやっていない。単なる出稼ぎ目的だ。すまないがこの後予定がある。そろそろ出発する。」
「あ、わかりました。またお待ちしています。」
ギルドを出て、少し離れた路地裏を目指す。
路地裏の指定の場所に着いたら背の低い黒のスーツを着た爺さんが待っていた。
「ヒッヒッヒ、アンヤさん。お待ちしてましたよ。」
コイツは情報屋のX。裏社会等の情報を提供してくれる。俺はコイツの情報を貰いに来た。
「今日集めた素材だ。確認してくれ。」
そう言って俺は袋を渡す。
「どれどれ…レッドドラゴンの素材・ボクガマラの素材…ほう、全てSランクモンスターの素材全部入ってますね。いやはや流石ですな〜」
「それだけ集めたんだ。例の件はちゃんと持ってるんだよな。」
俺はXに確認をとる。
「ええ、ええ、ちゃんと仕入れてきましたよ。どうやらナイトメアの幹部の1人があの山の麓で休憩を取ってるみたいです。しかも生贄の奴隷も何人かいるみたいです。敵の数はおよそ100人ぐらいでみんなかなりの手練れみたいです。」
Xが他にもいろいろ情報を提供してくれた。
「……なるほど。協力感謝する。」
俺は踵を返し、ナイトメアのいる山を目指す。
「おや?まさか今夜決行されるのですか?相変わらず即時決行されますね〜」
Xが不敵な笑みを浮かべながら答える。
「ナイトメアだろうか、魔物だろうか、魔王だろうか、俺はそいつらを絶対に生かしちゃおけねー。必ずこの手で殺す。」
俺はXに対してそう答える。
「ヒッヒッヒ、相変わらず表情も変えずにそんなこと言って、流石の儂も震えてきますよ。」
「………。」
俺は行動に移そうとした時、Xが急に追加情報を出した。
「ああ、アンヤさん。ちょっと待ってください。言い忘れたことがあります。」
俺は再びXに顔を向ける。
「まだ確定ではないのですが、どうやらナイトメアに捕われてる生贄の中にヴィクトリア王国の姫がいるとの情報がありまして…」
「…」
ヴィクトリア王国…まさかその単語が出てくるとはな…しかも姫だと…
「まあ、あまり確証のない情報なのであってるかどうかわかりませんが、一応頭に入れておいてください。」
「わかった…またナイトメアの情報があったら教えてくれ…また良い素材をとってくる。」
「ヒッヒッヒ、こちらこそよろしくお願いしますよ」
そのまま路地裏を出て山の方へ向かう。
(待ってろナイトメア…お前らは必ず殺す。)
アンヤは街の外へ消えてった。
~ナイトメア視点~
「ジーク様、準備のほうが整いました。」
「うむ、了解した。」
部下の一人が報告し、移動を開始する。
「しかし、やりましたね。魔王様の生贄をとらえるだけなのに、
まさかヴィクトリア王国の姫まで捕まえれるとは。」
「まさか護衛の中に騎士団長がいなかったのはラッキーだったな。」
まあ、その護衛はあっけなく殺したし、王国が姫がさらわれるっていう情報を得るのはもう少し先になるだろう。その間に魔王様の生贄を終わらせればいいだけの話だ。
「さあ、魔王様の復活のために我らナイトメアが人肌脱ごうぞ。」
「おぉ!」「魔王様のために!」「ぎゃあああああああああ!!!!!」
突然、部下の悲鳴が響き渡る。
「何事だ!!」
慌てて悲鳴が聞こえた場所に行ってみると、そこにあったのは部下の死体だった。
ナイトメア全員が戦闘態勢をとる。
周りを警戒していると歩いてた方向から1人こちらに向かってきた。
「おまえら、ナイトメアだな」
男が我らに問う。明らかに敵意がある言い方だ。
「部下をやったのは貴様か?」
「だったらどうする。」
男は私の問いに表情も変えずにそういった。目も隠しておかしな奴だと思ったが、
ふと幹部の会議で問題になっている内容を思い出した。
「なるほど、貴様はもしかして死神だな。」
「…………。」
ナイトメアが何万人も殺され、最重要危険人物にも入っている暗殺者。それが死神。
その奴が我々の前に現れた。
「ふん、いくら死神でもこの数で戦闘力もある私の部下が一気に攻撃したら、さすがの死神もお手上げだろう。」
「………。」
死神は何も言わない。おそらくこの数にビビってるんだろうな。
「おまえら、一気に殺れ!!」
部下が一斉に死神に襲い掛かる。これで死神も終わったな。
「……くだらん」
死神が急に髪の色が変化したと同時に
「なっ!」
なんと100近くおった部下たちが一瞬で塵と化した。
~アンヤ視点~
俺はナイトメア幹部であるジークに詰め寄る。
「な…あ…」
現実を受け止めきれないのかジークは茫然としている。
その間にもアンヤはジークの目の前まで来ていた。
だがアンヤはジークをさらに追い詰める。
「…どうやら1人の部下を遠くに逃がして仲間に知らせようとしてるな。そんなことさせると思ってるのか?」
アンヤは右手に電撃がはしる。そして空に向かって
「サンダーアンタレス」
遠くで雷撃が落ちた。そして部下の反応が消えた。
「これでおまえだけになったな。ジーク」
アンヤは目隠しとマフラーを外す。そしてジークは恐怖を感じた。
「化け物……」
ジークはぼそりとしゃべる。強さも姿ももはや死神じゃなく単なる化け物だった。
「怖いだろう。白目も黒になり、黒目も真っ赤で、体にはこんな模様まで付いたんだ。全部てめぇらのせいでな。」
ジークは魔法を放ってアンヤに攻撃しようとしたが、その威力はシャボン玉並みの攻撃力だ。
「な!なぜ私の魔法がこんなに弱っている!!」
「俺の魔法(能力変換)の空間にいるからだ。この能力はこの空間の中の一番雑魚のステータスの4分の1を相手のステータスに書き換えることができる。この中の雑魚は生贄にする予定の奴だな。魔王の生贄が仇となったな。」
ジークはこの場から逃げ出そうとしたが、両手両足が動かないことに気づいた。
「逃げても無駄だ。逃げられないように呪いをかけたからな。」
「え、あ、なんだこれ!!!」
ジークの両手両足はなんと植物が枯れたように腐っていた。動かそうとすると枯葉を握りつぶしたかのようにボロボロに落ちていく。
ジークは死の恐怖に駆られた。だかジークはアンヤに提案をする。
「ま、待ってくれ!貴様のその姿は魔族の体だろう。ならば、我々ナイトメアの一員にならないか!もちろん、金もあるし、人間どもを支配することができる。思うがままにだ。今なら幹部にもなれるぞ。どうだ、貴様にはとってもいい条件だろう。」
ジークはアンヤに仲間になるように提案してきた。だか…
「俺の願いは、権力も、富も、支配もいらない。
俺の願いはナイトメア・魔物・そして魔王を。この手で殺すことだ。」
ジークは「ま、まって」と言って、アンヤはそのジークの首をはねた。
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