終焉のカタルシス

暁 闇夜

プロローグ

「みんな!!こっちよ!!早く!!!」

僕らの生活がいきなり崩れた。邪教集団<ナイトメア>がいきなり攻めてきたんだ。

「みんな!!このカプセルに入って!!」

ミレ姉が誘導して孤児院のみんなを全員カプセルに入れる。

「ミレイユも入りなさい!早く!」

「え!でも脱出ポットは外のレバーを上げないといけないんでしょ?おばあちゃんは

ヴィクトリア王国についたら子供たちを誘導してほしいの。だから私がここに残って…」

「馬鹿なことを言うんじゃないよ!!!私はもう老いぼれだから気にするんじゃないよ!!いいから入んな!」

孤児院の母のカヤおばあちゃんが強く言う。

カヤおばあちゃんは僕ら捨てられた子供を拾って自分の子供のように育ててくれた。ある程度教育してくれたり料理をみんなの分まで作って一緒に食べてくれたりととても優しいおばあちゃんだ。

「いいかいみんな?ヴィクトリア王国に着いたらまず騎士団に連絡するんだ。あとは騎士様達がやってくれるよ。だから、みんな必ず生きるんだよ。」

カヤおばあちゃんが優しくみんなに説明している。

カヤおばあちゃんは自分を犠牲にしてみんなを助けようとしている。そのくらいみんなが大切なんだ。

だが、アンヤがカヤおばあちゃんの後ろを強く体当たりして脱出ポットに入れてその入り口を閉じた。

「アンヤ!」

カヤおばあちゃんがびっくりした顔でこちらを見る。無論ミレ姉も同じだ。

「アンヤ!何馬鹿なことをしてるんだい!早く開けな!」

カヤおばあちゃんが声を荒げる。

「何言ってるんだ!子供だけでヴィクトリア王国に行っても生きていけるわけないだろ!カヤおばあちゃんはヴィクトリア王国に着いたら子供達を守ってくれ。ミレ姉もよろしく頼む。」

「何を言ってるのアンヤ!本当にやめて!お願い!」

「アンヤ何をやってるの!早く入って!」

「アンヤさん、早く!」

ミレ姉だけじゃなくアリサ、トウコも声を出す。

他のみんなも声をあげて俺を説得していた。

俺はレバーを上げる。

外からナイトメアが入ってくる。

「おい!連中が逃げるぞ!撃て!」

ナイトメアの放った魔法は俺の腹に当たり、お腹に大きな穴が空いた。そのまま俺は何もできずに倒れた。

「いやああああああああああああ!!!

アンヤああああああああああああ!!!」

「う、嘘でしょ…」

「なんてことを…」

その時、脱出ポットが発射された。

孤児院のみんなは大声をあげていたが、もう聞こえなくなっていた。

(みんな…生き…て…く)

脱出ポットが発射した後、床が崩れてアンヤはそのまま落ちていった。

「ち、あのガキが庇ったせいで逃げられちまった。」

「まあいいじゃねえか?目的は別だし。

あのガキ脱出ポットが発射されたあと穴に落ちちまったけど、一応回収するか?」

「放っておけ。どうせ助からん。俺らは魔王様の復活のために精霊の力を奪いにきたんだからよ。

封印の場所は本当にここなんだよな?」

ナイトメアのボスがそう言い、タバコを吸い始める。

精霊は魔法属性によって最高分類の生き物だ。

精霊の加護を受けると力が格段にレベルアップする。だが、精霊は気分屋でなかなか力を与えようとしない。しかも100年前もずっと加護を与えてないらしい。

「間違いないです。へへ、楽勝でしたね。」

「ああ、そうだな。よしお前ら、くまなく探せ!」

ナイトメアは「ヘイ!」と合図し、行動を開始した。


一方、穴に落ちたアンヤは石碑に囲まれている所の中心で倒れていた。

意識朦朧の中で、どこからか声が聞こえた。

「おい、どうやら魔王復活のために私らの力を奪いにきた奴らがきたらしいぞ。」

「どうする?流石にやばくない?」

「仕方がありません。この力をこの子に捧げましょう。」

「おい!6属性をコイツに一つに入れるってか!

正気の沙汰じゃないぞ!」

属性には火・水・風・雷・光・闇の6属性がある。

基本魔法使いは2〜3種類の属性しか使えず、6属性を使える人は歴史上誰1人いない。

さらに魔法を使う時、何かしらの代償がある。

基本は魔力が減るのだか、適合していない属性を使うと拒絶反応が起きて、自分にダメージがくる。なので魔法使いは基本的に自分に合った属性で戦う。

「魔王が復活して私達の力が魔王に使われるのは最悪です。だったらこの子が命が尽きる前に力を渡し、死んだら力を失うので、奴らの計画が阻止されます。」

精霊の1人は冷静に言う。他の精霊も納得する。

「ち、しょーがね。おいガキ、こんな役目でワリーが未来のために利用させてもらうぜ。」

そう言い残し、石碑が輝き始めてアンヤの方に光が集まり始める。

だが、ここで予想外のことが起きる。

「!!!この子!!」

「な!全ての属性に適合してるだと!」

なんとアンヤの身体は全ての属性を使えることができるらしい。

これには精霊も驚きを隠せないようだ。

「…託してみますか。」

「ああ、コイツならもしかして。」

その時、精霊達はアンヤに力を与え、期待を膨らませた。


一方、ナイトメアの連中も石碑を見つけた。

「ボス、ありましたぜ。」

「あれか、ん?ちょっと待て」

ナイトメアのボスは違和感を感じた。

なぜなら精霊の石碑に精霊を感じないのだ。

さらに石碑に囲まれているその真ん中に1人の少年が立っていた。

「ボス、あいつまだ生きてるぜ!」

「馬鹿な!確かに虫の息だったはずだ!だがなぜ傷1つないのだ!」

その時、アンヤの目がおかしいことに気づいた。

白目が真っ黒に染まり、黒目が真っ赤になっていた。それだけではない、身体には色んな模様が浮かび上がっており、とてつもないオーラを纏っていた。

(これはまずい!)

ナイトメアのボスは撤退命令を出そうとしたが、声を出すことができなかった。

翌朝、孤児院の場所が綺麗さっぱりなくなっていた。

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