第26話・スロス、後方支援に徹する
「この者の死を拒絶する。……『レイズ』」
「おはようございますの、モミモミ」
「きゃあああああああ!! 生き返って早々に人の胸を揉むなああああああ!!」
「あろんぱ」
目覚めにイラの一発はキツいな。俺はもう一度死ぬところだった。
「スロス、あんたね!! 私は一日で何回蘇生魔法を使えば良いのよ!!」
「目の前に胸があったら誰だって揉むでしょ?」
「揉むなあああああ!! て言うか、アヴァの蘇生を考えたら、私の魔力はすでにカツカツなのよ!!」
イラの蘇生魔法。この魔法は信仰系職業における最上位の魔法だから。
発動には膨大な魔力を必要とする。
イラが一日に発動できる蘇生魔法は五回が限度。だが、それは他の魔法を使用しない場合。
現状では俺たちは歴代魔王のアンデットに囲まれているわけで。
「イラ。アンデットって事は君の仕事だよ?」
「分かってるわ。でも……歴代魔王のアンデットなんて戦力を計算できないわよ?」
俺とイラは背中合わせになる。
ここは魔王の墓地がある部屋の中心部。つまり、俺たちはアンデットに囲まれてしまっている。
「きゃは♪ 当然だけど、まあちゃんも加勢するね? と言うか、二人とも加勢して下さい。お願いします」
まあちゃんが深々と頭を下げてくる。
「スウ……」
「スロス……、こんな状況になってまで居眠りするんじゃないわよ!!」
イラが俺の頭を殴ってきたよ。痛いな。
背中合わせの体勢でイラも器用だよね?
「まあちゃん、了解」
「スロスってば軽くない!? て言うか、私のゲンコツが無かったことにされてる!?」
「きゃは♪ スロスちゃん、ありがとう。イラちゃんは?」
「うう……、この状況下で聞いてくる? やるしかないじゃない!! そもそもケルちゃんを助けるためなんでしょ!? やってやるわよ!!」
「ガウガウ!!」
イラも素直じゃないね? そして背中の温もりが温い。
「イラの背中って気持ち良いよね?」
「あんた……、このシリアスな雰囲気の中で小さくセクハラ発言するの止めなさいよ?」
お? イラの背中がフルフルと震えている。
イラも情緒不安定だよね?
「何かイラッとする事でもあったのかな? イラだけに」
「ダジャレを使い回すんじゃないわよ!! スロス、……後で覚えてなさい?」
おお、イラの目が煌々と発光している。
俺は後日何回死ねば良いのだろうか?
「殺人は一日に五回まででお願いします」
「干物にすれば死体も腐らないでしょ? あんたの死体を炭酸水で浸して永久保存してやるんだから!!」
イラも恐ろしいことを言うよね? ミイラの具体的な作成方法を言われてもな?
「そんな事したらイラが一人ぼっちになっちゃうじゃないか?」
「大丈夫よ。必要になったら水をかけてスロスを盾にしてあげるか。ふふふ……」
イラって、こんなに病んでたっけ?
ツンデレとヤンデレの共存か。萌えるなあ……。
「きゃは♪ 二人とも協力ありがとうございます。じゃあ、私は二人を巻き込んだわけだし先陣切って敵を撹乱してくるね?」
まあちゃんは手にクレイモアを握りしめて元魔王たちのアンデットに突っ込んでいく。
まあちゃんのお尻って後ろから見るとグッと来るんだよね。
「ええお尻してますがな」
「スロス、あんたは確実にフリーズドライにして上げるわ。この戦いが終わったらね!!」
イラが拳に浄化魔法を纏わせてアンデットの大群に突っ込んでいった。
「じゃあ俺は二人の支援だね。ほいっと」
浮遊魔法でイラとまあちゃんの支援だ。二人の視線を追えば良いだけ。
そうすれば二人が、どのアンデットを狙っているかが判断可能だ。
「スロス、ナイス!! うおりゃああ!!」
「きゃは♪ スロスちゃんの浮遊魔法って凄いねえ」
俺の浮遊魔法で移動速度を上げる二人。アンデットをドンドンと粉々にしていく。
「……うーん、もう少しだけ艶が欲しいな。えい」
「きゃああああああ!! イラ、私のスカートを浮遊させんな!! これじゃ前方が見えないじゃないの!! ぶっ殺すわよ!?」
「にゃははは。私はスカートじゃないから助かっちゃた。きゃは♪」
イラのスカートは腰にラインにスリットが入っているからね。生唾ものだよ。
……そして鉄製のスカートだから敵の攻撃を防ぐ事ができるんだ。
一体のアンデットがイラに向って拳を振り抜いたんだ。
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