第25話・スロスの煩悩が全開する【後編】
イラが鬼も形相で俺に詰め寄ってくる。
「にゃはは。ケロちゃんはモンスターだから、生活環境に魔粒子がないとダメなんだよね? きゃは♪」
魔粒子。それはモンスターにとって、人間で言うところの酸素と同意。
確かに魔王城は魔粒子で満たされている。
ここはモンスターの生活環境に適していると言える。
「ねえ、まあちゃん?」
「イラちゃん? どうしかにゃ? きゃは♪」
「だったらケルちゃんを魔王城から連れ出したらマズいんじゃないの?」
「それだとダメなんだ。きゃは♪」
「どう言う事?」
「うん。まず魔王城の耐久性が限界に来てるんだにゃ。ここを作った設計事務所が建築強度を偽造してたんだにゃ。きゃは♪」
「……魔王の建設依頼を引き受ける人間がいたんだ」
イラが小さくツッコむ。
だけど、まあちゃんみたいなボンキュッボン!! の美少女に頼まれたら俺なら即決だよ。
初代魔王が美少女だったかな知らないけど。
「でね、そろそろ魔王城も限界っぽくて焙烙でもしたらケルちゃんが危ないでしょ?」
「で、それが俺たちを連れてくる理由にどう繋がるの?」
「ケルちゃんは、お墓の番犬だから、ここを離れるとお墓が暴走するの、きゃは♪」
イラの表情が引き攣っていく。
どうやらイラもことの重大さを理解したらしいな。
まあちゃんは一言で『暴走』と言ったけど。つまり俺たちに、その暴走を止める協力をしてくれ、と?
「ね、ねえ。まあちゃん、質問して良い?」
「イラちゃん、何かにゃ? きゃは♪」
「その暴走って具体的には……どうなるの?」
「墓場に眠る歴代魔王たちのアンデットが襲いかかってくるにゃ。きゃは♪」
ほらね? 俺とイラのコンビに依頼して来るくらいだから。
それくらいの覚悟はいるよね?
「だからノーベル様って苦手なのよ!! こう言う大事な事をなんで手紙に書いてくれないの!? え!? 歴代魔王たちのアンデットって何人の魔王と相手するの!!」
「お?」
魔王たちの墓標が揺れる。大きく揺れる。
俺は周囲の墓標に視線を向けた。すると墓地全体が大地震の如く揺れている。
めんどくさいな。
この部屋って空気が汚いから呼吸がいつも以上に疲れるんだよね?
だが俺にも譲れないものがある。
「スロス!! 見てよ、墓地から魔王たちが這い上がってきたわ!!」
魔王のアンデットたちが姿を現し、イラが慌てだす。
「とにかく二人には魔王のアンデットたちの殲滅を手伝ってほしいにゃ。きゃは♪」
「まあちゃん、やってやるよ!! 俺はソリッドから透明化スキルを教わるまで死ねなんだよ!!」
「このデバガメ野郎!! 魔王たちと同じようにアンデットにしてやるんだから!!」
「へぶそ」
俺はイラに思いっきり頭を殴られてしまった。魔王のアンデットったちを前に、俺は死んじゃいました。
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