第18話・イラの実力
「まさか、ガイド役のまあちゃんと逸れるなんて……」
「スウ……」
「寝るなあああああ!! スロス!! ダンジョンで居眠りなんて冒険者失格じゃないの!!」
俺は浮遊しながらパチンと指を鳴らした。
「うるさいなあ。イラ、こっちにおいでよ」
「って!! きゃあああああ!!」
イラが大声で叫び出した。俺は浮遊魔法で君を浮遊させているだけなのに。
「ほれほれ、もうちょっと俺の方に来なよ」
「あんた!? まあちゃんやアヴァと逸れたからって大胆にセクハラしてんじゃないわよ!!」
ここは魔王城の地下部。一階層から城に足を踏み入れた俺たち。
だが、早々にまあちゃんやアヴァと逸れてしまった。
理由は単純。俺とイラが落とし穴に落ちたからだ。
「……イラも暴れないで。守れなくなるから」
「何を言ってるの!? って、きゃあああああああ!! トラップが発動したの!?」
地下部はまっすぐ歩くのみ。俺とイラが落下した地点は一本道だった。
トラップが仕掛けられていてもおかしくない。
「ほら、イラも暴れないで?」
「う、うん。ごめん。横から矢が飛んでくる、トラップの基本ね」
ようやくイラが落ち着きを取り戻してくれた。
「イラは攻撃魔法が苦手なんだから」
「そうね……。はあ……、基本に立ち返るわ」
深呼吸をするイラ。これで安心だ。イラは優秀なセージだから。
「スロス、私の強化魔法はいる?」
「大丈夫。一本道だから索敵も最小限で済むから」
俺とイラのコンビは役割が単純だ。
攻撃と警戒は俺が、支援と回復はイラが担当する。
セージのイラは攻撃魔法がほぼ使えない。そしてメイガスの俺は回復魔法が使えない。
「……ねえ、スロス?」
イラが俺に話しかけてくる。
「何?」
「妙な音が聞こえない?」
「聞こえるね。これは……アンデットの大群かな?」
だが敵がアンデットとなれば話は別だ。アンデットだけはイラが攻撃を担当する。
対アンデット用の浄化魔法はセージの得意分野だから。
イラが音がする方に手を突き出して魔法の準備を始める。
「……スロス、敵の数と距離は?」
「30秒後に到着するよ。数は100かな」
普通のセージだったら浄化魔法を広範囲に撃ち放つ状況だ。
だけどイラは普通じゃないんだよね?
「はああああああああ!! アンデットなんて粉々にしてやるんだから!!」
イラがアンデッドに向かって走り出した。
彼女の攻撃手段のファーストチョイスは格闘技戦なんだよね。
「世界中探したって空手を使うセージはいないよね?」
俺はイラをマジマジと見つめながら独り言を呟く。
「やあああああ!! せいっ、とう!! はいいいいい!!」
イラは拳に光を纏わせる。浄化魔法を纏ったイラの拳がアンデットたちを次々と粉々に粉砕していく。
「……おお。回し蹴りからの裏拳、正拳に頭突きのコンボか。おっと」
俺はイラの後ろでパチンと指を鳴らす。
「ナイス、スロス!! 浮遊魔法で浮いた敵を叩く!」
もはや武道家顔負けのコンビネーションだよ。
俺が浮遊魔法で敵の隙を作る。
「うおりゃあああああああああ!! はっ!!」
イラが最後の一体にトドメを刺して息を吐く。
すごいな、イラの周囲は彼女が砕いたアンデットのゴミの山だ。
「いつも思うけどイラのステータスってどうなってるの?」
「え? 接近戦用のステータスは極めたわ。次は何を極めようかしら?」
君はセージだよね? パラディンやグラップラーとかじゃないよね?
「……イラは頼もしいね?」
「スロス、それって嫌味?」
嫌味なものか。これが俺の相棒の実力だ。
「最強のメイガスの相棒は最強のセージじゃないとね」
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