第11話・スロス、激怒
「たかが冒険者風情が貴族の俺に何を抜かす!!」
男爵がスロスを怒鳴り散らす。
「一つ、あんたは冒険者という生き方を小馬鹿にした」
何度でも言うが俺は冒険者という生き様が好きだ。自由で何者にも縛られないから。
ジル男爵は俺を否定したも同然だ。
俺はパチンと指を鳴らした。
「うがっ!! 歯が!? 歯が勝手に抜け落ちた!?」
「……俺が浮遊魔法であんたの歯を抜いたんだ」
俺は男爵へ即効性のある脅しをかける。痛みは人を萎縮させるから。
男爵のような人物には特に効果的と言える。
「うわあ……、スロスが本気で怒ってる」
イラが俺の言動にドン引きしている。俺はまだ本気で怒っていないのだけど。
「二つ目、あんたのせいでイラの実家が破産したんだ」
「何を抜かすか!! 子爵家は俺に頭を下げて金を借りていったんだ!! 感謝して欲しいくらいだね!?」
男爵を見ているとイライラしてくるんだよね?
頼むから俺に無駄なカロリーを消費させないで欲しいな。
俺は再びパチンと指を鳴らした。
「男爵って危機感が薄いんじゃないの?」
「貴様、……浮世!! 俺に何をした!? 体が熱い!! 体の内部が燃えるように熱いぞ!?」
男爵はまるで蕁麻疹でも発生したかのように全身を掻き出す。哀れだね。
「俺の浮遊魔法で男爵の血液に含まれる赤血球を動かしているんだよ。動けば摩擦熱が発生する。あんたの血液が沸騰しているんだよ」
「なっ!?」
「どうかな? 火炎魔法だと外部から焼かれていくけど、浮遊魔法は体内からやきつくすんだ。新鮮でしょ?」
男爵の表情が強張っていく。そして青ざめる。
真っ赤な血液の話をしているのにね?
「スロス、この件の後始末をするのは俺なんだぞ? 少しは、その辺りを考慮してくれると助かるんだが?」
ベアルーシさんが俺に不満を漏らしてくる。彼が男爵の身辺調査をしていると言う事は、財務大臣が絡んでいるのだろう。
そうなると俺たちが男爵に関与したことも隠蔽してくれるはず。
めんどくさいけど、二人とも良い人だからね?
でも、めんどくさいから考慮しないよ。
「三つ目だ。男爵はイラにいやらしい目を向けたね?」
「スロスがベアルーシを無視した!?」
イラもうるさいな。ツッコみは後にしてちょ?
「それこそ言いがかりではないか!! イラの方から俺に抱きついてきたんだぞ!?」
「イラにセクハラして良いのは俺だけだよ?」
「んなわけあるか!! スロス、今までのセクハラ全てを纏めての訴訟起こしてやるんだからね!!」
イラのツッコミが部屋に響き渡る。彼女の唾が俺に飛んで来るんだ。
今日もイラは絶好調だね。
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