ケンとマオ(現代ファンタジー)

「こら、マオちゃん!早くしないと小学校遅れちゃうわよ」

 かがみをみるとママがドアからおかおをだしているのがみえる。

 そういえば、なんでかがみの中のママと目があうのかな。ふしぎだね。

「まだかみ、とかしてないもん」

「よし、ママがやってあげようか?」

「だいじょうぶ、じぶんでできるから」

「やれやれ、おませんさんね」

 いっつもママは、私を「おませさん」っていうの。

 「おませさん」ってマオみたいにちっちゃいけど、おしゃれとかすきな子のことなんだって。

 きのう、パパがおしえてくれた。パパはなんでもしってるからね!

 でもマオちっちゃくなんてないよ。もう6さいだもん。

 りっぱな「れでぃ」なんだよ。

 ママは「れでぃ」のこころをぜんぜんわかってない。

 まったくこまっちゃうよ。


 キャンキャンッ!


「ほらほら。ケンもはやくっていってるわよ」

 ケンはうちのイヌだ。ちゃいろとしろのイヌ。

 コーギーっていうイヌなんだよって、パパがおしえてくれた。

 パパでもわからないことがあるんだなっておもった。

 だってケンだもん。

「ちがうよ、ママ。おはようっていってるんだよ」

「はいはい、ママ玄関で待ってるからね」

「はーい」




「うん、ばっちり♪」

『今日は念入りですね』

 ケンがおすわりしながら、マオにおはなしする。

 マオとケンはおはなしができるの。

 でも、ほかのワンちゃんとはおはなしできない。

 もっといろんなワンちゃんとおはなしできたら、たのしいのにね。

「だって2くみのミワちゃんのことマサトくんかわいいっていったんだもん」

『それはそれは。あ、マオさんスカートのチャックが開いてます』

「あ、ほんとうだ」

『ふふ、レディと言うにはまだまだですね』

「ふんだ。ケンだってまだこどものくせにぃ」

『私は二十七歳っていつもいってるじゃないですか。立派な紳士なんです』

 いつもケンはそういうけど、マオはしってるんだよ。

 マオが三さいのときにケンはうちにきたの。

 マオは六さいでしょ?

 だから六から三をひいて、三。ケンは三さい。

 ひきざんくらい、かんたん。

 マオはもうかけざんもできるんだから!

 いんいちがいち、いんにがに、いさんがろく、いしがはち……あれ? ちがったかな?

「マオちゃん! まだなの?」

「あ、いまいくよ!」

 げんかんで、ランドセルをもったママがまっている。

「じゃあね、ケン」

『いってらっしゃい。給食、残しちゃダメですよ?』

「はーい、いってきまーす!!」




 おそとにでたら、ぽかぽかとあたたかかった。

 いいおてんき。

 かえりも、おてんきだといいな。

「ワン!」

 おとなりのシロだ。マオと同じくらいのおっきいイヌ。

 しろいからシロ、なんだって。そういえば、ケンはなんでケンっていうんだろう?

 かえったら、ママにきこうっと。

「おはようシロ」

「ワンワンっ!!」

 やっぱり、ほかのワンちゃんは「ワンワン」とか「キャンキャン」としかきこえない。

 あしたになったら、おはなしできるようになりますように。

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