幕間15※デイジー視点

パーティーでソフィアの殺害に失敗した私は会場から連れ出され牢屋に閉じ込められた。

薄暗い地下牢は酷い匂いをしており、鼠が走り回っている酷い場所だった。


「なんで…どうしてよ…」


アーサーにはパーティーに出るなと言われたが、国王の使いには『アーサー殿下の婚約者としてパーティーに参加しろ』と言われた。だから会場に行ったのに、そこで待っていたのはアーサーからの婚約破棄だった。

大勢の前で恥をかかされたのだ。

しかも恥をかかせた張本人はソフィアに向かって婚約者になってほしいと言い始めた。

屈辱的だった。

しかしソフィアには既に婚約者がいた。それも隣国の王太子という大物だ。

大笑いだった。だって私に婚約破棄を言い渡しておいて、自分が婚約者にしたい相手にフラれてるのよ。無様だったわ。


アーサーに対してはスッキリ出来た。

しかしソフィアが隣国の王太子と婚約した事によってオズワルデスタ公爵は幸せになってしまう。

それが許せなかった。

だから計画通りソフィアを害そうとしたのに邪魔をしてきたのは彼女の新しい婚約者だった。

冷たく見下ろしてくる王太子に押さえつけられ、投げたナイフも刺さらず、近くにいた男に連れ出された。


「このままだとあのクソ公爵が幸せになっちゃう…。許せる?許せないわ。きっとお父様がどうにかしてくれる。これまでもそうだったじゃない。大丈夫よ。まだ復讐する機会はあるわ…大丈夫」


ぶつぶつ呟いていると地下牢に二人の男女が連れて来られた。

お父様とお母様だった。

なんで?どうして?

ああ、分かったわ。私を助けに来てくれたのね


私は柵に近寄って二人に手を伸ばそうとした。

が、お父様からは強く睨まれた。


「お前のせいだ!お前のせいで、私たちまで!お前など生まれてこなければよかったんだ!」


怒鳴り声で言われたのは娘に対して言うような言葉じゃなかった。

うるさいと口を塞がれたお父様と顔色が悪いお母様は私とは別の牢に閉じ込められる。

どうなってるの?


呆然としたまま数時間が過ぎた。

静まり返った地下牢に現れたのは憎きオズワルデスタ公爵だ。


「よくもうちの可愛い娘を傷付けようとしてくれたね?」


普段見せていている笑顔を一切見せず冷たく見下ろしてくる公爵を私は睨み付けた。


「あんたのせいでしょ!あんたが私をフラなければ、あんたの娘を傷つけようなんて思わなかったのよ!」

「ふざけるな」

「本気よ!」

「じゃあ本当に私への復讐の為に娘を傷付けようとしたのか?」


そうよ、と叫ぶように言うと柵越しに髪の毛を引っ張られた。ガンッと音を立てて体が柵にぶつかる。

体も、髪も、全部が痛い。


「そんなくだらない理由で私の宝物を傷付けようとしたのか」

「い、たい…」

「どうしようもないクソ女だな、君は」


パッと解放された瞬間、私は牢の奥に逃げる。

悪魔のような怖い顔付きで見つめてきていた公爵は途端に笑顔を作った。


「君は公開処刑される事となったから」

「は?」


待ってよ、なんで、私は誰も殺していないじゃない。

死刑になるのは人をたくさん殺した時でしょ。

意味わからない!


「当然だ。レイディアント王国の王太子を傷つけ、次期王太子妃を害そうとしたのだからな」


公爵の言葉を受けて全身の血が引いていく。

いやよ、死にたくない、死にたくない。


「馬鹿だね。大人しく底辺の男を漁っているだけに留めておけば身を滅ぼす結果にはならなかったのに」

「たすけ、て…」

「誰も君を助けには来ないよ。君は相手を遊ぶ事しかしてこなかったんだから。まあ、あと数日間は自分のやった事を後悔しながら過ごしたら良い」


じゃあね、と階段を登っていく公爵。


「死にたくない、死にたくない…」


数日後、私は牢から連れ出された。

逃げられないようにしっかりと拘束されたまま連れてこられたのは城下町の広場。

見物に来ていた平民達は私に向かって石を投げつけてきた。


お前のせいでソフィア様は苦しんだ。

ソフィア様を悲しませた悪魔が生きていて良いわけがない。


皆がソフィアの為に私に向かって石を投げてきたのだ。

なんで、どうして、こうなったの。

たった数ヶ月前までは幸せだったじゃない。


「嫌よ。私は幸せになるべきなのに…」


磔られた私は業火に焼かれていく。

熱い、熱い、熱い。

助けて、助けて、助けて。


「死にたくない…」

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