第17話
元婚約者がしつこいです。
今日は手紙と共にドレスまで贈ってきました。
『愛するソフィアへ』
相変わらずくだらない始まり方をする手紙を読み進めるとドレスの事が触れられていた。
『贈ったドレスを君に着てほしいんだ。私とファーストダンスを踊ろう』
手紙を置き、大きな箱の中身を見ると彼の瞳の色であるエメラルドが散りばめられた金色のドレスが丁寧に入れられていた。
はっきり言って気持ち悪いですわ。
どうして婚約解消した相手にこんな事が出来るのでしょうね。理解出来ません。
「ドレスも手紙と一緒に陛下達のところに送っておいて」
手紙とドレスを持って来てくれた侍女に頼み、遠ざけてもらう。
『君が私に対して怒る気持ちも分かるけど私達は真実の愛で結ばれた者同士。早く帰って来ておくれ』
先程の手紙に書かれていた言葉です。
アーサー殿下が私との復縁を強く望んでいる事は分かる。それだけじゃない。
おそらく殿下は私が自身を好いていると勘違いしているのだと思う。
馬鹿なのですか?と思い切り罵ってやりたい。
「お嬢様、ウィリアム殿下がいらっしゃいました」
「すぐに行くわ」
応接室に通されていたウィル様のところに向かうと既視感のある大きな箱が机の上に乗っていた。
「ご機嫌よう、ウィル様」
「ああ、ソフィ。こっちに来てくれ」
彼の隣に座れば目の前の箱を差される。
開けろって事でしょうか。そっと箱の中身を確認すると予想通りドレスでした。
彼の髪色である銀色のドレス。アーサー殿下のプレゼントの時に感じた不快な気持ちはなく純粋に嬉しいと思った。
「ソフィに着てもらいたいと思って用意させてもらった。着てもらえるか?」
「ええ。もちろん」
婚約者からの贈り物だ。
大切に着るに決まっている。
ドレスに触れると自然と笑みが溢れた。
「喜んでもらえたか?」
「はい、嬉しいです」
「そうか、良かった」
満足そうに頷くウィル様の笑顔を見ると隠し事は良くないと思ってしまう。
ちゃんと話しておいた方が良いわ。
「ウィル様、またアーサー殿下から手紙が届きました」
「なに?」
「それだけじゃなく今日はドレスも届いて…」
「どこまで馬鹿なんだ…」
怒りを通り越して呆れるウィル様。
ええ、私もその気持ちはよく分かります。
「それはどうしたんだ?」
「迷惑なので『二度と贈らせないでください』と手紙を付けて陛下達に送りました」
「なるほど。手元に置いておくわけにもいかないからな」
「ええ、本当に面倒事を増やす方です」
それにしつこい。
いい加減、私の事は諦めて欲しいところです。
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