幕間12※デイジー
私デイジー・ストーンが男遊びを覚えたのは成人してからだった。
年頃だった私の本能が良い男を欲したのが多分きっかけ。
最初に寝た男はもう顔も名前も覚えていない。
ただ誰かの婚約者であったような気がする。
それからは欲しいと思った男を全て手に入れてきた。誰かの男を手に入れるのは特に気分が良い。問題が起こったとしてもお父様が解決してくれるから特に私の男遊びには支障が出なかった。
ただ一人だけ口説き落とす事が出来ない人間がいた。
オズワルデスタ公爵だけは口説く事が出来なかったし、一度擦り寄って以降は近づく事すら出来なかった。
彼に近づいた事に関しては私に甘いお父様に叱られた。
私はそれが気に食わなかった。
私を振った事を後悔させてやる。
復讐を誓った私が目を付けたのは公爵の娘ソフィア・オズワルデスタだった。
社交界で完璧な淑女と称される彼女から婚約者を奪ってやろうと考えたのだ。
しかし彼女の婚約者は王太子。
私の色仕掛けも上手くいくか分からなかった。
結果、王太子アーサーは手に入った。
しかも『真実の愛』とか臭い事を言い始めた彼はあっさりとソフィアとの婚約を解消したのだ。
私は大笑いした。
あの飄々とした公爵も悔しがっているだろう。
そう思ったのにお父様から聞いた話によれば公爵は「婚約を解消出来て良かった」と言っているらしい。
ふざけないでよ。
私はアーサーと結婚して王妃になった時、公爵とその家族を全員国から追い出してやろうと考えた。
私はアーサーに愛される。だから問題なく王妃になれると思ったのに。
アーサー達の婚約解消後、すぐには婚約者になれなかった。
失敗したと思った。
三ヶ月後、王様から婚約許可をもらい私達は婚約者になる事に成功した。
神様は私に味方してくれている。
そう思ったのに王太子妃教育は想像よりも厳しくて辛いものだった。
なにかあればすぐにソフィアと比較する教師達。
私を見つめてくる姿は「こんな子が王妃になれるわけないでしょ」という感じだった。
アーサーに教師達を変えるように頼んだ。
でも結局変わらなかった。辛くなった私は王太子妃教育から逃げ出すようになっていった。しかしアーサーのところに逃げても追い返されるだけ。
だから他の男のところに逃げ出した。
彼らはみんな私の心も体も慰めてくれた。
アーサーには悪いけど、結婚するまでの火遊びくらい大目に見てほしかった。
「悪いけど君との婚約は破棄させてもらう事にした」
婚約披露パーティーの前日、私はアーサーからそう言われた。
訳が分からなかった。
「どうしてよ!」
「デイジー、他の男と寝るのは楽しかったかい?」
全身の血の気が引く。
なんでバレてるの?
バレないようにやっていたのに…。
「随分と舐めた真似をしてくれたね?」
笑っているのにアーサーからは強い怒りが感じられた。
もうここは演技をするしかない。
「ち、違うの!あれは無理矢理なの!私が愛しているのはアーサーだけよ!」
これだけ言えばアーサーだって許してくれるはず。
しかし彼は鼻で笑うだけだった。
「本当よ!だから婚約破棄なんて…」
「君は王族に嫁ぐ為の資格すら知らないのか?」
「え?」
そんなの知らない。
習ったかもしれないけど覚えていない。
首を横に振ると呆れたように溜め息を吐かれた。
「王族に嫁ぐ女性は処女じゃないといけないんだよ。既に君が失ってるものだ」
絶句した。
そんなの一度失ったらどうにもならないじゃない。
地べたに座り込む私の前にしゃがみ込んだアーサーは真っ黒な笑みを浮かべた。
「明日のパーティー、君は来るな」
「なっ…」
「私の婚約者はソフィアだけだ」
「なにを言ってるよ…」
ソフィアとの婚約は解消されている。
それなのに再び婚約者になるなど可能なのだろうか。
教養のない私には分からなかった。
「ソフィアが私の『真実の愛』の相手だ」
君じゃない。
そう言ったアーサーは立ち上がり、部屋を出て行く。
「許せない…」
公爵も、アーサーも許せない。
二人を苦しませるにはどうしたら良い?
一人の女性の顔が浮かんできた。
「ソフィア、あんたを殺してやるわ」
あの二人への復讐の為、私はソフィアを殺す決意をした。
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