幕間⑦※ウィリアム視点
国を離れる許可をもらい王都にあるオズワルデスタ公爵家の屋敷に行けば重苦しい空気が漂っていた。
「お久しぶりです、オズワルデスタ公爵」
「お久しぶりでございます、ウィリアム王太子殿下」
挨拶をして向かい合うように座れば威圧感が凄まじい公爵に睨まれた。
「傷心中の娘に縁談話を申し出るとは何を考えているのか考えをお聞かせ願いますか?」
いきなり本題を出されて苦笑いをする。
さっさと理由を話せと言わんばかりの態度だ。
これには後ろに控えているチャーリーも頰を引き攣っている。ただこいつの場合は笑いを堪えているだけだ。
「ソフィア嬢が好きだからです」
「は?」
「一目惚れでした。五年前から彼女の事だけが好きなのです」
「馬鹿な事を言わないでください」
間髪入れずに呆れた顔をする公爵。
分かっていた事だが縁談を受け入れる気はないのだろう。ならば本音を話すしかない。
「俺は本気だ」
「殿下?」
「ずっとソフィアだけが好きだ。何度彼女を忘れようと思った事か。それでも諦める事など出来なかった。会う度に好きになっていった。本気なんだ。どうか結婚を許してもらえないだろうか」
今の俺の姿は王子として失格だと思う。
それでも男としてこれだけは譲れない。必死になっても、惨めだと思われても彼女を諦める事など出来ないのだ。
「……嫌ですね」
「どうしてだ」
「娘が望むか分からないからです」
「それは…」
「娘は傷付いているのです。もう傷付くような事は起きてほしくない」
俺が彼女を傷つけるような真似をすると言われているような気がして悲しくなった。
「ただ殿下の気持ちは伝わりましたよ」
「公爵」
「娘が望むのならば婚約は許可しましょう。ただ望まないのであればこの話は無しにしてください」
本来なら王族からの願いは断れない。それも友好国である王族の願いならば尚更だ。それなのに断る選択を持ち続けようとする公爵は本当に娘を想っているのだと理解した。
「何故今になって許可をしてくれようとしたのですか?」
「打算があるからですよ」
「は?」
打算?王族との繋がりを得るの為の打算か?
いや、それなら最初から縁談を受け入れてくれたはずだ。
じっと公爵を見つめると肩を竦めて話し始めてくれた。
「アーサー殿下の婚約者になったストーン伯爵令嬢は碌でもない女です」
ストーン伯爵令嬢の話を聞くと呆れを通り越して笑いが出てきた。
そんな馬鹿な女に引っ掛かった哀れなアーサーには少しだけ同情もする。そして二人を引き離そうとする陛下のやり方には呆れた。
もっと上手くやれば良いのに。
「もし碌でもない女だったとアーサー殿下が気がつけば娘のところに戻ってくる可能性があるでしょう?それを避けるにはウィリアム殿下と婚約させるのが一番だと思ったからです」
「なるほど」
「こんな父親を持つ娘の婚約者になりたいですか?」
真実を教えつつ俺を試しているのか。
悪いが簡単に諦め切れるほど軽い気持ちではないのだ。
「使えるものは使う。それは貴族として間違ったやり方ではないだろう」
「そうですか…」
公爵は安心したように笑った。
「今、娘はオズワルデスタ公爵領に居ます。会いに行ってやってください」
「機会を与えてくれて感謝する」
礼をしてからすぐに公爵領へと向かった。
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