幕間⑥※ウィリアム視点

父と母にソフィアの事を話せば笑って了承してくれた。

彼らも礼儀正しいソフィアに対しては好印象しか抱いてなかったのだ。


次にやる事はどうやってソフィアと接触を図るかだ。

彼女の父であるオズワルデスタ公は娘を溺愛していると聞く。

婚約解消後に来ている縁談話も全て断っているそうだ。

そうなると俺からの縁談にも良い顔はしないだろう。

しかも娘を傷付けた男と同じ王太子の立場にある。より嫌悪されるだろう。


「チャーリー、ソフィアはまだ王都にいるのか?」

「いや、父親の領地に行ってるって噂だ」

「領地か…」


オズワルデスタ領はフールの王都よりもこちら側に近い。

直接会いに行くか。


「チャーリー、オズワルデスタ領に行くぞ」

「は?嘘だろ?公爵に会いに行ってからの方が」

「彼女に直接話をする」

「いやいや、待て待て、落ち着けって非常識すぎるぞ」


立ち上がる俺の服を引っ張り、止めるチャーリーはいつものヘラヘラ笑うふざけた表情ではなかった。


「やっぱりそうか」

「当たり前だ」

「ではオズワルデスタ公爵に会いに行く。その後でソフィアのところに行く」


公爵には納得してもらうしかない。

嫌な顔をされても、土下座をしても良い。

ソフィアを他の男に渡したくはない。


オズワルデスタ公爵に会いたいと手紙を送ってから数日後、返事がやって来た。

内容を簡潔に言えば会いたくないというものだった。

どうやら娘が婚約を解消されてから一ヶ月も経っていないのに会う気はないらしい。

まさか会う事すら拒絶されるとは思わなかった。

どうする事もできず時間だけが流れていく。

気がつけばソフィアの婚約解消から三ヶ月が経過していた。

何度か公爵に手紙を送ったがいつも同じ返事。


「もう権力使っちゃえばいいだろ」

「ダメだ。それは認めてもらう事にならない」

「まぁ、そうだけどさ」


チャーリーにも呆れた顔をされるが権力を使って無理やりソフィアを婚約者にするのは嫌だったのだ。


「そんなウィルに一つ報告だ」

「なんだ」

「アーサー殿下が新しい婚約者を作ったらしい」

「それで?」

「近いうちに婚約披露式をするらしいぜ。お前も呼ばれている」


ソフィアを傷付けた元婚約者アーサーのお祝いなど御免だ。

それに彼らの事なんてどうでも良い。

しかしそんな時だった公爵からの返事に『私もお会いしたいです』と書かれたのは。


「急に会いたいってどういう事なんだろうな」 


チャーリーは首を傾げた。

確かに今まで会わせようとしなかったのに急に会いたいというのは些か変な話だ。しかし私としては公爵に会えるなら何だって良かった。


「チャーリー、オズワルデスタ公爵に会いに行く準備を進めろ」

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