幕間⑤※ウィリアム視点
出会いから五年、俺はソフィアを引き摺り続いていた。
おかげでやってくる縁談話を全て跳ね返してしまっている。
大好きなソフィアと会えるのは年に数回だけ。常に彼女の隣を独占しているのは婚約者であるアーサーだ。
会う度に美しさに磨きが掛かっていくソフィア。気持ちが冷めるどころが強くなっていく自分に呆れる。
母である王妃には応援してもらっているが、父である国王には諦めろと言われている。
チャーリーには馬鹿だなって呆れられている。
自分でもいい加減に諦めるべきかと考え始めた時だった。
転機が訪れたのだ。
「婚約解消?」
「ああ。お前の愛しいソフィア嬢とアーサー殿下の婚約解消が向こうで発表されたらしい」
チャーリーは嬉しそうに笑って報告して来た。
婚約破棄になれば良いと思った回数は何度もあるがまさか五年経った今叶う事になるとは思わなかった。
しかし急になぜ婚約解消に至ったのか理解が出来ない。
噂によれば来年、再来年には結婚すると聞いていたのに。
「なぜ解消になったか分かるか?」
「アーサー殿下が他の女を好きになっちゃったからっていうのが一番信憑性が高いな」
「なんだと」
あんなに素敵な人が側にいて他の女に目移りをしただと。ふざけるな。
「怒るなよ」
「うるさい」
「それにこれは絶好の機会だぜ?」
「どういう意味だ」
一人の女性が長年連れ添ってきた婚約者と別れる事になったと言うのにヘラヘラと笑うチャーリーに苛立つ。
睨みつければ、チャーリーはやれやれと首を振る。
「だってさ、今のソフィア嬢には婚約者がいないんだぜ?でもすぐに出来るだろうな。なんせ公爵令嬢だし」
「なっ…」
確かにそうだ。
婚約の破棄であれば令嬢は傷物扱いを受け縁談も減るが今回は解消だ。しかも非はアーサー側にある。
何の落ち度もない公爵令嬢を他の貴族が放っておくとも思えない。
「相手が下位の貴族だったらお前の婚約者にするのは難しいけどさ。相手は高位貴族。しかも王太子妃教育を長年受けてきた完璧な淑女様。周囲も反対しないと思うぜ」
「そうかもしれないが彼女は今傷ついている…」
俺だってソフィアを婚約者に出来るのあればしたい。
五年間燃え尽きる事のない恋心は今も燃え盛っている。だが、その気持ちを今の彼女が受け止めてくれるとは思えない。
「馬鹿だなぁ。傷付いているところを慰めるのが男だろ?」
「弱みに付け込めというのか」
「別に悪い事じゃないと思うぜ」
「馬鹿げている」
「なら他の男に奪われても良いんだな」
煽るような事を言ってくるチャーリー。
だが、その表情はなんとも言えないものだった。
「俺はウィルには好きな人と結ばれて欲しいんだよ」
「……」
「好きになってもらう努力はこれからすれば良いだろ?」
「はぁ…」
確かにソフィアが他の男に奪われるのは嫌だ。
本来なら強引なやり方は好まないが仕方ない。ここはお節介で優しい幼馴染の言葉に乗っかってやるとしよう。
「言っておくが王太子としての権力を使うつもりはない」
「お、おう…」
必ず自分の力だけでソフィアを好きにさせてみせる。
もし好きになってくれなければ潔く身を引けば良い。
「父上のところに行ってくる」
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