幕間④※ウィリアム視点
俺の名はウィリアム・サンライト。
フール王国の隣国レイディアント王国の王太子をしているがその事は良い。
俺には気になっている女がいる。
名前はソフィア・オズワルデスタ。
フールの公爵令嬢である彼女と初めて出会ったのは五年前。レイディアントにて催された舞踏会だった。
フールから招待したのは向こうの王族のみ。
公爵令嬢であるソフィアがやって来た理由はフールの王太子アーサーの婚約者であったからだ。
十三歳とまだ少女とも言っていい年齢だったソフィア。緊張しているはずだと失敗があっても広い心で受け止めるつもりでいた。しかしそれは杞憂に終わった。
彼女は若いながらに完璧な淑女だった。
会場にいるレイディアントの女性貴族よりも、誰よりも淑女らしい淑女。
そんな彼女に見惚れていたのは俺だけじゃなかった。
「羨ましいな」
ぽつりと溢れ出た言葉に自分で驚いた。
俺は昔から何かを羨んだり欲したりする事はなかった。恵まれ過ぎた環境にいたせいだ。
それなのに王太子アーサーが羨ましいと思った。
それと同時にソフィアを欲しいとも思ってしまった。
相手がアーサーでなければすぐに奪い取ってしまっていたかもしれない。それくらい彼女は俺の中で大きな存在となったのだ。
いわゆる一目惚れというやつだった。
アーサーとのファーストダンスを見事に終えた彼女に近づきダンスを願い出れば一瞬だけ年相応な彼女が見えた。それすらも愛らしいと感じる自分に笑ってしまいそうだ。
「私でよろしければ」
私の手に重なった手は小さな物だった。
壊れないようにそっと包み込み細い腰に手を回せばふわりと優しい舞う。
好きだ。
ダンスの最中に何度そう言いかけた事か。
ソフィアと踊るダンスは楽しかった。かなり練習をしたのだろうと分かるくらいには彼女は踊りやすい相手だった。
レイディアントの言葉を正しく話せていたり、こちらの礼儀やルールを身に付けているのも好ましい。
ダンス中の話の内容から教養の高さも伺えた。
全てが理想的な女性だ。
「ソフィア嬢、また踊ってくれるか?」
「機会がありましたら」
俺と別れたソフィアに駆け寄ったのは彼女の婚約者であるアーサーだった。
仲が良さそうに話す二人を見ていたら心が痛くなった。
侍従であり親友でもあるチャーリーにその事を相談すると大笑いされた。
「堅物王子のお前が一目惚れなんて笑うわ」
「うるさい」
「まぁ綺麗な子だったからな」
チャーリーはあの会場にいた。だから俺と踊る彼女を見ていたのだろう。
「アーサー殿下の婚約者か。婚約者にするのは難しいだろうな」
「分かっている。だから諦めるつもりだ」
「気の迷いかもしれないし深く考えない方がいいぞ」
綺麗な子に浮かれていたと見られるのは仕方ない事だ。だが、自分の心だ。彼女に対しての想いが気の迷いでない事はよく分かっている。
ソフィアの生まれがフール王国でなければ、自国の公爵令嬢であれば良かったのに。
そう思わざるを得なかった。
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