幕間③※アーサー視点
ソフィアとの婚約解消後、私を取り巻く環境は大きく変化した。
父上と母上には避けられるようになり、ソフィアの父であるオズワルデスタ公を始めとした王城内で働く貴族達からは冷たい視線を送られるようになった。
その変化に戸惑いを隠せずにいた。
私はソフィアとの婚約を破棄すれば、すぐにデイジーと婚約出来ると思っていたのだ。
しかし父上も母上も頑なに首を縦に振ろうとはしなかった。話をしたくて執務室を訪ねれば忙しいと追い出され、夕食を共にしても食事中に話すなと怒られる。
二人はソフィアの事を気に入っていた。だから勝手に婚約破棄した事を怒っているのだろう。でも、きっとデイジーに会えば素敵な女の子であるという事を二人にも理解してもらえる。
そんな甘い考えに取り憑かれていた。
デイジーは私とソフィアの婚約破棄を喜んでくれていた。
それだけじゃない。
私との婚約の話を受け入れようとしてくれていた。
何度も「すぐに婚約が出来なくてごめん」と謝り、その度に「仕方ないよ」と優しく微笑んでくれているのだ。
本当にデイジーは優しい子だ。
彼女の父親であるストーン伯爵も私達の事を祝福してくれている。
早く婚約出来ると良いと笑顔を見せてくれているのだ。
オズワルデスタ領に戻っているソフィアには約束していた通り貴族男性を何人か紹介した。だが、私の事を想ってくれているのかソフィアが紹介した男性達と会ってくれる事はなかった。
きっと私に裏切られて拗ねてしまっているのだろう。
そしてソフィアとの婚約破棄から三ヶ月後、ようやく私はデイジーと婚約する事が出来た。
父上と母上は私達の事を、真実の愛を認めてくれたのだ。
そう思ったが両親は顔合わせの時以外はデイジーに会おうとしなかった。
息子の婚約者となり、未来の王妃となる相手に会わない。
ふざけていると思うが現国王陛下に逆らえるわけがなかった。
それにそれすらどうでも良くなるくらいデイジーが婚約者になった事が嬉しかったのだ。
「デイジー、待たせてしまってごめんね」
「良いのよ。真実の愛に障害は付き物だわ」
「それにこれから大変な思いをさせてしまうだろう」
「王太子妃教育の事?大丈夫よ、頑張るわ」
優しく微笑むデイジーに私は軽くキスを送った。
これから待っているのは幸せな日々だ。
ソフィアも早く私の事を忘れて幸せになってくれたら良いのだけど。
「また誰か紹介してみるか」
「何か言った?」
「何でもないよ」
ソフィアは大切だった婚約者なのだから幸せになるまで私が面倒を見てあげないとね。
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