第4話
「真実の愛ねぇ?」
楽しそうに発言する母には妙な威圧感があり、咄嗟に離れてしまう。
「お相手は聞いたのかい?」
「ストーン伯爵令嬢だそうですよ」
彼女の名前を出した瞬間、父と母が吹き出した。
その気持ちは分かるので苦笑いで見守っていると何も知らない弟が首を傾げる。
「本当にあのストーン伯爵令嬢かい?」
「ええ、あのストーン伯爵令嬢デイジー様ですわ」
「殿下は賢い子だと思っていたのだけど馬鹿なのね」
楽しそうに笑う両親を見ながらジョセフが尋ねてきます。
「そのストーン伯爵令嬢とはどのような人物なのですか?面白い方なのですか?」
「ジョセフ、彼女は男性好きなのよ」
デイジー・ストーン伯爵令嬢。
一人娘で甘やかされて育てられた彼女は傲慢で我儘で自分の欲しいと思ったものは物であろうが人であろうが必ず手に入れないと気が済まない性格なのだ。
そんな彼女は成人したあたりから容姿の良さを活かして多くの男性を食い物にしてきたのだ。
しかも相手が既婚者であろうと婚約者がいようとお構いなし。結果、相手がいる男性は離縁したり婚約破棄になったりしている。
その責任を彼女が取った事は一度もない。それどころが嘲笑っていると聞いた事がある。
そんな彼女はごく一部の間で『最悪の悪女』と呼ばれている。
彼女に関する事が大きく出回らないのには理由がある。
関わった貴族男性達が自分たちに関する悪い噂を流したがらないから。それと彼女の父である伯爵が財務大臣を担っている権力者だからだ。
私達が知っている理由は彼女が迫った男性の中に父がおり、調べたからである。
もちろん母を愛している父は彼女と関係をもったりしていないし、この件に関しては公爵家に睨まれたくない伯爵から謝罪があった。
二度と父に近寄らないという事で決着したのだ。
「殿下はそんな人間を真実の愛の相手だと言ったのですか?」
「知らなかったんだろうね」
「あまり知られていない事ですからね」
ショックを受けた様子のジョセフに申し訳なくなる。
ただ弟も十四歳となり背が伸びた為、大人の男性として見られる事が多くなってきた。
お茶会に参加すれば多くの令嬢に声をかけられるように人気があるのだ。
そんな弟をあの悪女が見れば欲しがるだろう。
可愛い弟には素敵な相手を見つけてほしいのだ。成人する前に教えておいて損はないだろう。
「だからね、デイジー嬢には近づいちゃいけないよ?」
「近づきませんよ!お父様に迫るような女ですよね?」
無理です!と大声で叫ぶジョセフはすっかり怯えた様子だ。この様子なら弟がストーン伯爵令嬢の毒牙にかかるこ事はないだろうと安心する。
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