お休み死神兄弟(死神の正逆位置兄弟)

「主ー!」

「あ、死神くん! もうお仕事終わったの? そろそろ寝ようと思うんだけど、一緒に寝る?」


 夜になり、そろそろ眠ろうと準備をしていた私は、仕事終わりの死神くんを誘ってみた。というのも時々死神くんとは一緒に寝たりするため、今回が初めてではないのだが。


「うん! ちょっと待ってて、ボクパジャマに着替えてくる!」


 誘いを受け、死神くんは心底嬉しそうに自室へ消えていった。その間私は布団を敷き、枕を整え完全に寝る体制印象に入っていた。

 暫くして、死神くんが戻ってきた。


「お待たせ主ー! 見てみてー!」

「きゃー! もしかして新作? すごく可愛いじゃない! 前の猫もかわいかったけど、今回は恐竜さんなのね……しかもちゃんと尻尾まで付いてる!」


 死神くんのパジャマは、所謂着ぐるみパジャマ。

どこで入手しているのかは不明だが、毎回異なる着ぐるみパジャマを着てくるので、毎回見るのが楽しみでもあるのだ。

 今回は恐竜さんだったようで、可愛らしく尻尾付き。幼顔の死神くんにとてもよく似合っている。


「えへへーでしょー? もうすぐ兄貴も来ると思うよー! 戻る途中で会って、主と寝るって言ったら自分も寝るってうるさかったし!」

「え、そうなの?」

「多分今パジャマに着替えてるんじゃない? 兄貴は放っておいてさ、ボクたちだけで寝ちゃおうよ!」

「おい、誰を放っておいて眠るつもりなんだ?」


 噂をすれば、しー君本人が登場した。

 しかし、私は彼の身につけているパジャマを見て、唖然とした。そう、彼もまた、死神くんとお揃いのパジャマを着ているのだ。正確には死神くんの恐竜さんパジャマが緑色に対し、しー君は赤色の色違い。


「え、このパジャマってペアルックなの……? というか、しー君ってこういったパジャマ着たりするんだね……」

「……意外だったか、私がこういうパジャマを着ているのは。最初こそは断っていたが、着ないといつまでも勝手にクローゼットにしまわれるからな、仕方なく着ることにしている。見た目は幼いが、案外着心地はいい方だぞ。主も一度着てみるといい、特に冬は寒いからな。」


(いや、しー君のそのすました態度に一番驚いているんだけど……)


「そ、そうなんだ……取り敢えずもう寝よう。誰が真ん中になる?」


 色々とツッコミを入れたい気持ちを抑えつつ、死神達に相談する。普段死神くんと眠るときにはどっちが右か左かなど、特に気にもしていないのだが、三人で寝るとなると場所によって眠れない人もいたりするだろう。私は基本的にどこでも眠れる為、正直どこでも問題はない。後はこの兄弟に任せよう。


「ボク主の隣だったらどこでもいい!」

「それは同感だな、では主を真ん中にして眠ればいい。そうすれば私もお前も主とともに眠れる、主はそれで構わないか?」


 結局私を真ん中にして寝ると言うことで決まったらしい。先に布団に入ると、いそいそと二匹の恐竜さんが両サイドから入ってくる。

死神くんはいつものようにべったりくっついて、ふふふと笑っている。しー君は恥ずかしいのか、顔こそはそっぽを向いているものの、私の手を握りしめている。

 何だが不思議な感覚だ、私に兄弟がいたのなら、きっとこうして眠ったりしたのだろう。最も着ぐるみパジャマを着ているかどうかは定かでは無いが……


「ん~? 主どうしたの?」

「随分と幸せそう表情を浮かべているな……一体何を考えているんだ?」

「いやね、私に兄弟がいたら、こんな風に寝たりしたのかなって思って……」


 私が言うと、二人は顔を見合わせ、静かに抱きしめてきた。すごく暖かく、優しいぬくもり。二人は相変わらず何も言わないが、言葉にしなくても言いたいことは伝わった。

 暖かい兄弟の温もりを感じながら、私はそっと二人の手を握りしめたのだった。

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