第16話 ごめんね……の原因
荒れた土地に透き通った北星の声が響く。
「……祓へ給ひ清め給へと恐み恐み白す」
北星が祝詞を唱え終わると、異形の妖はすうっと大地に沈むように消えた。
「追い払ってくれたのか……?」
土木会社の男たちの期待を北星は撥ねつけた。
「追い払ってはいない。眠ってもらっただけです。あなたがた……きちんと儀式をせずに、適当に工事を始めましたね」
北星の指摘に男たちは言葉を詰まらせる。
「先生、それはどういう……」
「この男たちは、きちんと地鎮祭をせず、新しい建物を建てようとしたんだ。それで土地の神が怒り、土地を守るために異形とかしたんだよ」
「それじゃ、あれは元は……」
真琴はそこで不意にあることを思い出した。
「でも、前にごめんなさいって声が聞こえたって……」
「ああ、それはね。きっとこの土地のどこかにあるはずだ。大名屋敷だと奥のほうかな……」
北星が歩き出すのに、真琴が付いていく。
「私の歩いた後を付いてきなさい」
師匠の言葉に真琴は素直に従った。
(まだ妖が潜んでいるのかな……)
真琴は不安になったが、そうではなかった。
北星は真琴が草で足を切らないよう、先を歩いて、道を作っていたのだ。
「方角的には……こっちか」
空を見ながら、北星が方角を見定める。
「あ……空が……」
先ほど異形の妖が出たときは真っ暗になった空が、いつの間にか晴れていた。
「ここだよ、真琴」
北星に呼ばれて、真琴が小走りで駆け寄る。
すると、そこには小さな社があった。
「これは……」
「大名屋敷の邸内社だよ。小さな大名だったみたいだし、きっと氏神様の分霊だったのだろう。そばによってごらん」
真琴は言われたとおりに近づいてみた。
その社からは小さな声が漏れていた。
「……ごめんね、ごめんね……」
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