第11話 背広姿の来訪者たち

 翌日。

 真琴が学校から戻ると、先日、北星に依頼に来ていた男達が家の前をうろうろしていた。


「あの……」


 気にかかって声をかけると男の一人が振り向いた。


「ああ、君はここの治療院の子か」

「子供ではなく、先生の弟子ですが……」


 真琴が訂正すると、男たちの目が輝いた。


「おお、 君はあの先生の弟子なのか。先生はどうしたんだい?」

「今日は先生はご用があってお出かけなので、桜春堂治療院はお休みです」

「どこに行っているのかな? いつ頃帰ってくる?」

「わかりません。先生は時々そうやって行き先も告げずに、出かけてくるよとだけ言っていなくなることがあるので」


 男たちはうーんと眉根を寄せた。


「それは困ったなあ」

「どうかされたんですか」

「君の先生にもう一度話をして、なんとか手を貸してもらえないかとお願いに来たんだよ」

「……そうですか」


 真琴は昨日の北星の様子を頭に思い浮かべた。


(でも、もう一度話しても、先生はきっと受けなさそうな気がする……)


 北星は治療院をしていることもあり、お金のために徐霊することはない。

 あるいはそうならないために、働いてるのもあるのかもしれない。


「すまないのだけど、君、ちょっとだけ現場を見に来てくれないかな」

「僕が、ですか?」

「ああ。ちょっと見てくれるだけでいいんだ。頼む」

「でも……」


 自分には何の除霊能力もないので、真琴がためらっていると、男の一人が頭を下げた。


「新しい邸宅に住む実業家のお子さんは、春から東京の学校に通うのを楽しみにしてるんだ。だから、工期を間に合わせたいんだよ」

「古い大名屋敷があると、近所の人も荒れた屋敷が残って、雰囲気が悪くなって困るし……どうか手を貸してくれないか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る