第35話 ?

西側では、自由主義経済だから


軍部がどうであれ、意向とは無関係に民間が

原子力を研究し、商業利用しようとするのも自由だ。


西側の大学では、それの研究費用を国に要求し、研究原子炉を作ろうとしているとの情報がペンタゴンには寄せられた。


東側でも類似で、その

西側の動きとは別に

やはり科学的興味から、研究原子炉を大学で作ろうとしていた。



戦争となれば、その技術は軍事利用されるだろう。



母国の繁栄と、領土拡大などの

愚かしいスローガンの基に。






国の主導者たちの頭脳が平和主義になったとしても

これでは、やがてまた

核の時代になってしまう。


わたしとFerdinandは、途方に暮れた。


一体どうすればいいのだろう。




経済主義は、宗教と似たようなもので

それに人の欲が結び付くと

恐ろしい排他性を見せる。



原子炉応用の発電所でも、なんでも良いのである。

商社と言うのはそういうもので 

お金になりさえすれば

なんでも売買するのだ。



東側にも、働きかけているのは

西側の、主に日本の商社だった。


原子力の実験設備から、核燃料などを

どこからか調達してきて、売り込むのである。




商魂恐るべし。(笑)。




わたしたちは、再び大統領に相談した。すると、「それは、対共産圏貿易協定違反、で処罰できる。すぐに対処しよう」


と、大統領は力強い返答だった。



日本の商社は、闇で東側の軍事力強化に協力してはいけない、と言う国際的な決まりを無視していたのである。





それで、東側の動きは鎮静化したけれど。





Ferdinandは、別の手段を考えた。


化学工業で有名な、ある企業へ

ファクシミリで、技術文書を送った。


塗料や、食品添加物、プラスチック可塑材料の安価な製造方法である。


売り込み、と言う形態を装って。



その製造方法を使うと、微量の神経内分泌物質に良く似たChemicalになる。

それが、環境中に放出されれば

人間の過剰な攻撃性が抑制されるだろう、もちろん

副作用は無くは無いが、放射能で人類が滅亡するよりはマシだ。


それに、過去の科学者が気づく前に。

人々が平和を協調できるように

世の中が変わればいい。



と、彼は

少し危険な賭けに出た。


思惑が当たったかどうか

そのChemicalは、あちこちで使われるようになった。

船舶の塗料、住宅の外壁、ビニールの袋。


ラップフィルム。


あらゆる環境に使われ、主に水を媒介して

人間に作用を及ぼした。



結果、東西対立は緩和され軍備を競う事も減った。


侵略するのはChemicalが環境にない、未開の国の人くらいになった。

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